台湾大佛列伝6





大崗山超峰寺





台南と高雄の中間に岡山という街がある。

その街外れの山の中にある大崗山超峰寺という寺を目指す。




ここは17世紀の中頃に建立された仏教寺院で、三体の釈迦摩尼仏を祀る三聖殿や観音堂を中心に堂宇が山の斜面に沿って連なる名刹である。




そんな超峰寺の門前に不思議なスポットがある。




龍の船の上に3体の仏像が立つその脇に下りのスロープが。




その先には門があり、十大閻王殿と書かれているのだ。




十大閻王、つまり閻魔大王をはじめとした死後の裁きの事だ。



熱心な当サイト読者なら御存じであろうが、台湾は立体地獄のメッカで、過去にも麻豆代天府金剛宮などの地獄を紹介してきたが、ここの十大閻王殿でもあの世の様子をジオラマ仕立てで再現した展示がなされているのだった。



早速中に入ってみよう。


薄暗い室内にはあの世での十の裁判の様子が展示されている。



台湾で信じられる死後の世界は仏教が中国に伝来していく過程で道教と混ざり合って出来た思想だ。

特に死後に十の裁判をするという十王思想は台湾のみならず中国大陸、韓国、日本などでも広く信じられている。

十の裁判は死後7日から49日まで7日ごとに7回。その後100日、1年、2年後に行われる。

その結果、死者は地獄や極楽など次の行き先を決められるのだ。




最初に現れるのは一殿秦広王。



最初の裁判はごく簡単なもので身分照会程度らしい。

頭が馬で身体が人間の馬頭がいる。

馬頭は牛頭と共に地獄の獄卒である。



続いて二殿楚江王(初江王)。



2度目の裁判で早くも判決が出た死者がその場で処刑されている。

鬼に刀で切りつけられていて、痛そう。

台湾の他の立体地獄では電動で動いたり、叫び声がするお化け屋敷みたいな地獄もあるがここの地獄は特にそういったギミックもなく、落ち着いて地獄の様子を観察できる。





三殿宋帝王。



ここでは判決を下された死者が釜茹での刑に処されている。





傍らでは柱に括りつけられて責め苦を負っている者もいる。



四殿五官王。



ここでも責め苦が繰り広げられている。




あまりの恐怖に頭がひっくり返っちゃっている死者がいるぞ。



そしていよいよ五殿閻羅王(閻魔王)。



一般的に閻魔大王の裁判では生前の悪事を映す浄玻璃の鏡が登場するのだが、ここにはなかった。

責め苦で身体がバラバラになったのかと思ったら単に人形が壊れていただけでした…。




ここで、十の裁判も五つ終わり、折り返し地点。




お地蔵さんの慈悲に縋りつつ、後半戦が始まるのである。







六殿変成王。




ここでも磔にされた死者が鞭打ちをされているようだ。





七殿泰山王。




ここで四十九日になる訳だ。大抵の死者はこの裁判で行き先が決まる。

我が国で四十九日に法要を行うのはこの裁判の際に「故人は生前、いい人でしたよ~」、と泰山王に報告するためなのだ。

なので法要を怠ったりするとこんな事になるのだ。





八殿都市王。



死後百箇日に行われる裁判。

この後は七殿以前の判決の追加審議となる。

この辺になると死者の人達も若干疲れ気味なのだろう。

地べたに這いつくばってる人などもいる。




傍らでは石臼で潰されている死者が。



九殿平等王。



ここには鬼もいるものの激しい責め苦は見られない。

どちらかというと罪に問われない人がどの世界に行くか審議しているような役所っぽい雰囲気だ。




傍らの机の上の壺には次の世界に転生する前に前世の記憶を抹消する為のスープが入っている。



そしていよいよ最後の審判、十殿転輪王。



ここで最終的な次の輪廻転生先が告げられる。

行き先は六つの世界のいずれか。

最上位の天道、人間のいる人道、戦争の絶えない修羅道、

動物の世界の畜生道、常に飢餓状態の餓鬼道、そして最下層の地獄道。


それぞれの世界に生まれ変わるのだ。




人が死んで次の世界に転生するプロセスが事細かに説明されているこの立体地獄。

要するに生きている内は悪い事をせず正しく生きよ、という仏教的な道徳感を教育する役割があるのだ。


既に天道行きは難しいもののせめて人道には転生するべく善行を行おうと密かに心に誓う私であった。




十殿の前には地下に降りる階段があったが、閉鎖されていた。



この先、地獄の様子を更に詳しく伝える立体地獄でも出来るのだろうか。

期待したい。





さて、せっかく立派なお寺に来たのだからあの世の裁きだけ見て帰るのも忍びない。

超峰寺の本体の方も拝観しよう。




階段を上っていくと、観音堂や三聖殿が現れる。






観音堂の屋根越しに岡山の街が見下ろせる。



こうしてみるとかなり高いところにある寺なのだ。<






本堂である三聖殿は広く立派な建物であった。



参拝をしてから気付いたが、これが今年の初詣だったな。






三聖殿の裏は擁壁になっており、その先には山が続いている。






擁壁には羅漢のレリーフが刻まれており、賑やかだ。その中にいた羅漢の一人。






顔が割れてますけど…。


帰りは数キロ先のバス停まで歩いて行こう、と山道を下っていったものの急に雨が降ってきた。

木陰で雨宿りをしていたら、お寺帰りのお兄さんが車でバス停まで乗せてくれた。


御礼をしようとしたが頑なに断られてしまった。

これもまた仏様の御縁か。ありがたやありがたや。




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