普天宮(古奇峰育楽園)/新竹市



風が強いことから風城と異名をとる街、新竹市。
そんな新竹で迎えた朝、街は台風接近に備え厳戒態勢に突入していた。

ホテル近くの商店の多くが閉まり、駅前のデパートも午後から開店、そして入口にうずたかく積まれた土嚢袋がこれから訪れるであろう台風の強烈さを何よりも物語っている。

台風は正午頃にはこの新竹を含めた台湾北部に再接近するという。

さて。 今日のお出かけはどうしたもんでしょ?

外を見れば雨は降っていないものの相当強烈な風。風城の面目躍如である。
椰子の街路樹がなぎ倒されんばかりに荒々しい風に振り回されている。
そういえば道行く人々も何かせわしない様子で、台風に備えているのかと思えば、この日は台湾の七夕でその準備におおわらわだったりもするので深刻さがイマイチ判らないのだが、まあ普通ではないことは確か。

う~む。 やっぱ今日はおとなしく宿で寝てるか…
と思ったものの、雨さえ降ってなければ何とかなるかも、などと南国の台風を舐めきった判断を下し、結局なるべく早めに撤収する方向で新竹郊外の普天宮に向かった。

普天宮への道中、道に木が倒れてたり看板が落ちてたり、と早くも後悔の念が頭をもたげてきたが、程なく到着。
市内から近い割にはがっつり山の中だ…土砂崩れとかありませんように。

車を一歩降りると襲ってくる突風。
しかしこの雄姿を見た瞬間、大佛スイッチがON!
押し返すような超アゲインストな風に向かってズンズン突き進む。



後ろからの姿はまるで山の如し。

正面に回りこんで見上げれば、その恐ろしき顔は火の如し。

   
台風接近のため境内に参拝客は誰もいない。静かなること林の如し。

そして吹き荒れる突風。

…って風林火山かいっ!



というわけでこの巨大像の正体は名将武田信玄…じゃなくて三国志でお馴染みの名将関羽である。




関羽といえばマンガやゲームのイメージしか浮かばないのだが、
神さまとしての御姿は↓こんな感じになっちゃってる。




関羽は道教世界では最も人気のある神さまとしてその揺るぎなき地位は山の如し…ってもういいですか。

死後、紆余曲折を経て神さまになった関羽は今では軍神というよりは商売の神さまとして関公とか関帝、果ては関聖帝君などと呼ばれ、多くの人々、特にお金が大好きな人に(つまりほとんどの人、ということになりますかな)絶大なる支持を受けているのだ。
ホラ、横浜の関帝廟とか。

さて、何で蜀の一武将が王である劉備を差しおいて神さまになっちゃったかというと…

そこには様々な理由が考えられるのだが、結論としては良くわかんないみたいです。

どうやら道教の世界では後世に(芝居や小説などで)人気が出た人物は神として昇格していくようだ。
例えば孫悟空は西遊記の中で斉聖帝君と名乗るが後世にホントに斉聖帝君という神さまになちゃったり。

道教の持ついいかげんさ、もとい柔軟さからすると三国志演義で人気を博した関羽は神さまにうってつけだったのだろう。
そのうち姚明とかチャン・ツィイーとかパンダとかも神さまになっちゃったりして。

正面から見た関公像。

手前の覆屋の中にある車やおっさんと大きさを比べていただきたい。

高さは堂々の36メートル(120尺)

 

台湾で一番巨大な関公像であるのみならず、高雄の佛光山の引接大佛と並び台湾ナンバーワンの巨像。

実際はこの関公像は座像で引接大佛は立像であることを考えたら、台湾で一番大きな巨像であるといえよう。



表情が穏やかだったり、時にはマヌケっぽかったりする大仏に対して関公像とは一般的に怖い顔をしている。

それを36メートルに引き伸ばしちゃったもんだから、その怖さったら普通の関公像の数万倍。
山の中だから良いようなものの、正面に民家でもあったら毎日が緊張の連続であろうことは想像に難くない。


関公像の正面はテラスになっておりそこから下を見ると公園のようになっている。
実はこの公園、古奇峰風景区といい事前のリサーチでは奇妙な彫刻やら兵馬俑やら中国古戦車やらが渦巻くかなり太陽公園臭プンプンの公園&博物館のようだ。

東屋の屋根の下にチラリと見える足は以前三重県某所で見た白澤(はくたく)のものに違いない。
待ってろよ~、今行くからな~覚悟しとけよ~(何の?)。

   

と。その前に関公像の足元、普天宮を押さえておこうじゃないか。
堂内にも参拝客はおらず、掃除のおじさんがヒマそうにしていた。

主神はもちろん関公(ここでは関聖帝君と呼ばれていた)。

おみくじマシンも稼動中だった。我が国では少なくなったマシンも稼動中だが台湾では結構人気アイテムなのだろうか?

   

さて。先程関公像を背後から見た際に椅子の背もたれの部分に窓があったことを思い出した。
…むむむ、もしかして胎内巡りアリ?

と期待して掃除のおじさんに聞いてみると、中は公開していないようである。
勿論おじさんの言葉の意味はわからず、雰囲気と表情とジェスチャーを見て読み取り感度をISO6400に上げて判断した結果だったが、確かに上階に登る階段は閉鎖されていた。

で、閉鎖されているとはいえ上階には何があるのか?もしかしたら三国志のジオラマとか万体関帝奉納とか三国志風地獄巡りとかあるんじゃないの~と期待してみたものの、目下唯一の情報源であるおじさんに聞いても判らないだろうし、それ以上に中国語で何て聞いたらいいか判んないし、さらにそれ以上に答えてくれたところで雰囲気と表情とジェスチャーで読み取れる類の内容でもなさそうだし、結局何があるのか判りませんでした。

後で説明看板を見ると内部は9層になっており、様々な神さまが祀られているそうだ。残念。

民国65(1976)年につくられたというから台湾大佛界ではの老舗の部類に入ると思う。

   

で、いよいよワンダーランド古奇峰風景区へ!



…と思ったら閉まってました。
まあ、この天候だし、客は我々だけだし、いるのはお掃除のおじさんだけだし、仕方がないか。

とりあえず往生際悪く隙間から中を覗いたりする。
微妙な味わいの彫刻作品がちらほら。



そうこうしている内に段々風が強くなって雨も降って来た。
台風ももうそこまで来ていることだろうし…撤収ですね。






何故か駐車場の片隅にこんなお方が。風景区の展示品が余っちゃったんでしょうか。


次の大仏にGO!

台湾大佛列伝3
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