浦野墓地/沖縄県与那国町


那覇を出発した双発機が徐々に高度を下げてくると与那国島が見えてくる。

その島影が段々大きくなってくると周囲のほとんどを断崖で囲まれた島の様子が見てとれる。

大きな風力発電用の風車、奇妙なクラックの入った山、そして緑の絨毯を敷き詰めたかのような放牧地。

そして着陸まであとわずか、という時間に窓の下を見ると見た事もない異様な光景が目に飛び込んで来る。

この四角いモノは家ではない。そう、墓地なのである。

墓地といっても管理事務所があって、納骨堂があって、宗派は問いません、1区画○○万円!などという墓地ではない。

いうなれば墓以外には何もない、まさに墓純度100パーセントの死者の街なのである。

その純度もさる事ながら、沖縄らしく巨大な亀甲墓が連なっている上空からの眺めは壮観の一言に尽きる。

以前、台湾でやはり飛行機から似たような光景を見た事があるがここまで広大な墓地ではなかった。

島の規模を考えると異様なまでに大きい、と言えるだろう。

 

空港に着き、墓地に向かう。その名は浦野墓地

ここは島の中心地、祖内地区に隣接する海沿いの丘陵地である。

一歩足を踏み入れて唖然。とにかく広大だ。

見渡す限り墓墓墓・・・

空と海と緑と墓以外には何もない、という超シュールな場所を歩いていく。

時たま聞こえて来るのは風と波の音だけ。

ジリジリと陽が照りつける墓地には誰一人おらず、耳がおかしくなったのではと思える程静かだ。

 まるで祖内の集落をポジとすれば、その祖内のネガを見ているかのような感覚に陥る。

沖縄独特の巨大な亀甲墓が延々と続く。

どこか知らない国の知らない民族の集落のようでもあり、SF映画に出てくる未知の遺跡のようでもある。

中には和型と呼ばれる角柱の墓もあるがその大きさはやはり巨大だ。

 

まるでこの島の名物、海底遺跡を連想させる石積みの墓も多い。

亀甲墓を上から見るとこんな感じ。手前の亀の甲羅のような部分が納骨堂になってる。

納骨堂の前には前庭があり、清明祭にはそこで一族が宴会をする。

入口の前にある小さな四角い箱状のモノは子供が入る墓だという。

中には家が絶えたのか他所に引っ越したのか、崩れている墓や空になっている墓もあった。

草木に覆いつくされた墓。中は空だった。ここも何かの事情があって空家になっている。

中は階段状の棚になっていた。

棒が四隅に立っている墓があった。葬式が執り行われた家の墓なのだろう。

墓の前には紙で出来た飾り物が積まれていた。

また近くには亡くなった人を運ぶ龕があった。今でも使っているのだろうか?

 

さて。

この浦野墓地に隣接していきなり凱旋門が現れる。

塀で囲まれた内部は樹木が生い茂り、その先にはピラミッドのような建物がちらりと見える。

どんなお金持ちが住んでるのだろう?えっ、もしかしてこれが噂のマーク☆パンサーの家

いえいえ。・・・実はコレもお墓なんです。

聞くところによると地元のお金持ちが建てた墓地だという。

数百坪程はあろうかという敷地に建つこのピラミッド、残念ながら(個人のお墓ですからね)中には入る事は出来なかった。

何がどうしてこんな突飛な墓を造ってしまったんだろう。

島の人の話ではピラミッドの中にはリビングルームがあって御先祖様が何不自由することなく暮らせるようになっているとか、工費が1億円かかっているとか、今では墓守りをする人もなく内部は荒れてしまっているとかいう噂も耳にした。あくまでも噂ですからホントのところは知らないよ。

 

海上から見た件の墓。凱旋門とピラミッドの組み合わせは思いっきり与那国っぽくない。というか太陽公園みたいですね。

 それにしても意表を突く墓である。

巨大墓揃いの浦野墓地でもその存在は抜きん出ている。というか桁違い。というか次元違い。

台湾も日本もドンと来い!ついでにフランスもエジプトもドンと来い!と、言っているような勢い。

どこかSFっぽい浦野墓地のトラディショナル墓地群に対してこのピラミッドは凄く俗っぽくて、そのギャップが堪りませんでした。

 


2005.8.

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