台湾大佛列伝6





嘉邑鎮天宮





台湾の摩訶不思議な寺廟を巡る旅、お次は嘉義に向かう。

嘉義は南部の大都市高雄と中部の大都市台中の丁度中間辺りに位置する街だ。

この台中から高雄の間には実に味わい深い珍寺がひしめいており、ある意味台湾の珍寺多発地帯と言っても過言ではないエリアだ。

そんな嘉義の街外れにある素敵過ぎる道教寺院を訪ねてみることにした。

その名は嘉邑鎮天宮

道教のお寺だ。

先にも触れたが、台湾の信仰シーンは道教と仏教がハイブリッドに混ざり合っている。

我が国が神道と仏教を習合してきたように、中華世界でも土着信仰である道教と外来宗教である仏教は混ざり合い、互いに不可分な存在として成り立っている。

もちろん台湾でも仏教寺院と道教寺院は分けられてはいるが、互いに互いの神仏の像が祀られていたりしており、混沌としているのが現状だ。

このような二つの宗教の混成は世界中で発生している現象であり、興味深い信仰風景が次々と現れているのである。



前置きが長くなって恐縮だが、嘉邑鎮天宮である。



門前に立てばもう何の説明も要らないだろう。


巨大な三人の人物がみっちり肩を寄せ合って座っているのだ。この三像は三国志でもお馴染みの劉備、関羽、張飛の三傑の姿なのである。



魏、呉、蜀の三国が覇を争う三国時代を著した三国志、あるいは三国志演義の物語の序盤のハイライトでもある劉備、関羽、張飛の三人が桃園で義兄弟の契りを交わす「桃園の誓い」の名シーンを再現しているのだ。

その巨大さには目を見張るものがある。



像の高さは約16メートル、幅は約5.5メートルもある巨像なのだ。

それが体をみっちりくっ付けて鎮座している様子は普通ではない。


台湾の道教寺院には様々な神様の巨像があるが、3体並んで鎮座している所は珍しい。

中央に劉備、右に茶色い顔をした関羽、左に黒い顔をした張飛が並んでいる。

王と将なのだが、神格化が成され関羽と張飛は人間離れした容姿をしている。

建物の中に入ってみる。



拝殿では参拝者が次から次へと訪れ、線香を手向け、拝んでいく。

その奥には玉皇上帝や様々な神像が並んでいる。


更に右横の小部屋には60体の年神を祀った大歳殿があった。




六十大歳といえば何といっても甲子太歳金辨大将軍




当サイトの古くからの読者はよく御存じだろうが、最近知ったけど珍寺大道場って面白いわー、という奇特な読者もいるので改めて説明を。

間から手が生えていて、その手のひらに目があるという奇天烈な神様。

何でもかつて仕えていた主君に諫言したら目をくり抜かれたのだが、神様が哀れに思い薬を付けたら目から手が出てきてしまったという逸話を持つ神様なのだ。

おかげで他の神様よりも視野が広いという事らしいが、それにしてもこの神様のビジュアルを考えた人の方を神様として崇めたくなるような凄いビジュアルだ。

道教寺院にはたまにいるので皆さんも台湾の道教寺院に行ったら探してみて欲しい。




拝殿の両脇には階段があり、2階に上れるようだ。もちろん行ってみる。




2階には月下老人が祀られている。これは縁結びの神様である。




そして外のテラスに出るとそこは三体の巨像の足元だった。



間近で見上げる巨像の迫力は満点だ。足元に近寄ると踏みつぶされそうな気分になる。



聞けば、三傑(劉備、関羽、張飛)を祀る道教寺院は台湾では唯一だという。



なぜこの寺院に三傑がいるのかといえば、昔はこの嘉義の街は桃城と呼ばれていたのだという。



その桃城という名と三傑が契りを交わした桃園を絡めて三傑の像を造ったのだとか。

ちなみに三傑像の完成は1981年である。

完成の折には24日間の大法要が営まれたらしい。

改めて三傑の姿を見上げる。劉備、関羽、張飛。



それぞれ単独でも凄い迫力だが、三体揃うとより迫力が増す。

実は台湾には関羽の巨像はあちこちにあるのだが、やはりトリオの方がカッコイイ。


更に上階には仏教の釈迦、道教の太上道祖、儒教の孔子が並ぶ三教主殿が。



ここでも各宗教のハイブリッド化が進んでいる。


3階の裏手から外に出てみる。



拝殿や本殿の屋根が間近に見られる。




龍の装飾が見事だ。


こうして見ていると道教の神々は剣や槍を持っていたり、馬に乗っている武人が多い事に気付く。



長く戦乱の歴史を繰り返した地で生まれた宗教なのだなあ、と改めて感じるのであった。





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