きっかけは成田をウロウロしていた時の事。
成田山周辺にある札打ち習俗を調査していた際に偶然見つけた
道祖神(成田の札打ちの記事は
こちら)。
三竹山道祖神という。
その道祖神の脇に
小さな石祠状のものが奉納されていたのだ。
コレを見て即座に思い出したのは成田市中里にある
中里の道祖神だ。
↑中里の道祖神
大量の石祠が積まれた場所で、以前訪れた際には一体何でたくさんの石祠が奉納されているのか、
その意味や背景が一切判らず謎のスポットとして私の抽斗の中に入っていたのだ。
同じ成田市内とはいえ、直線で15キロ以上離れている2つの場所の似たような現象がある。
もしかしたらこの2点をつなぐ線があるのではないか?
そう思った私はグーグルマップでこの周辺の道祖神を片っ端から調べてみた。
すると有るわ有るわ。
ストリートビューで確認できただけでも
かなりの道祖神に小さな石祠が奉納されているではないか。
成田市を中心として西は多古町、匝瑳市、北は神埼町、香取市と北総地方のかなり広いエリアに分布しているようだ。
これは実地調査をすることで
この地域でしかみられない超ローカル信仰の全容を明らかにしてみよう!と思い千葉に向かったのである。
最初に訪れたのは成田空港の4~5㎞西にある
多古町の八坂神社。
三叉路の交差点の近くにある小さな神社だ。
左側には墓地が広がる。
神社、というにはあまりにもこじんまりしている。
鳥居の奥に小さな祠があるだけ。
で、内部。
中央の石祠には八坂神社の札が立てかけられている。
その祠を囲むように
ミニ石祠が並んでいる。
おおお、ありました、ありました。
数としては20数基。
自然石など正体不明の石も混ざっているので全部が全部ミニ石祠ではないのだろうが、ほとんどが
家形、あるいは将棋の駒のような形状だ。
手前左には道祖神と刻まれているので、道祖神信仰から派生した奉納物であることは明らかだ。
ただ、これが何を意味するのか?何故こんなにたくさんのミニ石祠が奉納されているのか?
その疑問はこの時点では解決していない。
とりあえず数を見る事で何か見えてくるかもしれないので、今日は見られる限り道祖神を見て行くことにする。
次に訪れたのは八坂神社近くの道祖神。
背後に小山が迫る、住宅街の周辺部のようなところ。
小さな三叉路の近くにトタン造りの神社?がある。
ここにも
たくさんのミニ石祠が並んでいる。
先ほど見た八坂神社のものよりも屋根がちゃんと彫刻してあるものが多い。
中央に比較的大きめの石祠があるが、よく見ると並んだミニ石祠の上に乗っている。
つまり奉納されたミニ石祠が先にあって、後から設置したものなのだろう。
石祠には天照皇大神宮という札が立てかけられていた。
更に西へ向かう。
匝瑳市内山の道祖神。
ここにもたくさんのミニ石祠が奉納されていた。
ここでは石祠というより
頭を三角に切った形状の石塔の奉納が多い。
そして正面には道祖神という文字が刻まれている。
事前のリサーチではこれより西、及び南の道祖神にはこのように大量のミニ石祠が奉納されている所はないようだ。
一応、この匝瑳市内山の道祖神を
ミニ石祠奉納の南限とさせていただく。
今度は北に進路をとる。
今回のリサーチ範囲は北総地域で、多古町、匝瑳市、そして成田市、香取市辺りを巡る予定だ。
この信仰のホットスポットである中里の道祖神を擁する成田市北部は多くのミニ石祠が多いようだ。
で、多古町の北部、
飯笹にあった道祖神。
道端にあった道祖神。
成田空港のすぐ西側にある道祖神だが、ミニ石祠の奉納は少なく、逆に草鞋の奉納の方が目立った。
道祖神に草鞋を奉納する習俗は全国的に見られるもので、そういう意味ではこの地方の道祖神っぽくなさが感じられた。
さらに北上して
成田市成井。
当サイトの古くからの読者であれば
ワットパクナムの近く、と言えばお判りいただけるかもしれない。
要するに成田市中心部からはかなり北にあり、いわゆる旧大栄町に位置する。
路傍の道祖神には破風屋根をきったミニ石祠が数基奉納されていた。
次に訪れたのは旧下総町。
この習俗の総本山といって良い中里の道祖神を擁するエリアだ。
いうなれば
ミニ石祠奉納習俗のホットスポットと言ってもいいだろう。
成田市小野。
山がちな集落の路傍にあった道祖神。
近年コンクリートで覆われたようだ。
家形の石祠が奉納されている。
同じく成田市小野の
八幡神社内にある道祖神。
こちらはミニ石祠はなく、チンチン祠とチンチン奉納でした。
同じく
小野の辻にある道祖神。
向かいには大師堂があった。
中央に大きな石祠。
その両サイドにミニ石祠がたくさん奉納されていた。
成田市中里。
中里の道祖神の近くにある。
お地蔵さんの隣に道祖神があり、数個のミニ石祠が奉納されている。
ちなみにこの近くにある楽満寺もかなり面白いお寺なのだが、今回は道祖神を紹介するのが本題なので割愛します。
で、いよいよミニ石祠キングの
中里の道祖神へ。
小さな三叉路にある道祖神。
鳥居の先には数段の石段があり、その先に石の祠がある。
その左側には物凄い数のミニ石祠が奉納されている。
ここに来るのは数度目だが、何度来てもその数と密度には圧倒される。
特徴的なのは数だけではない。
他の道祖神に比べると
奉納された石祠が少し大きい。
中には「本物の」祠のように真ん中に穴が空いてあるものもあった。
それにしても凄まじい量だ。
地面が石祠で覆われている。
逆に他ではよく見かけた「道祖神」と刻まれたミニ石祠はあまりなかった。不思議だ。
陽当たりの悪い場所の祠は苔が乗って緑色になっていた。
それにしても他の道祖神に比べて、
何故ここだけ大量にミニ石祠が奉納されているのだろう?
そして石祠の意味は?起源は?
その訳は後半戦にて判明するのでもうしばしお付き合いくだされ。
後半戦に続く