麻羅観音/山口県長門市
長門市の山中にある俵山温泉、のさらにはずれにある麻羅観音。
その道の愛好家の間ではちょいと知られた男根奉納のチンコ寺。
男根奉納…これほどビジュアル的に判り易く、見る人のハートをわし掴みにし、なおかつ強烈なインパクトを持つ信仰形態があるだろうか。
コレを考えた人は天才だと思います。ある意味。
この男根奉納、小牧の田縣神社や川崎の金山神社、愛媛の多賀神社、南紀白浜の歓喜神社などの有名どころを挙げるまでもなく、主に神社で繰り広げられている楽しい信仰風景だが、ここは何故だか観音サマ。
まあ、元々フレキシブルを絵に描いたような民間信仰形態なんで「チンコ奉納は神社じゃなければダメ!絶対!」てな事もないだろうから、その辺は鷹揚な態度で望むのが立派な大人というものだろう。
従って看板に謳われている日本一の称号は「(お寺の中では)日本一」という意味であろう、と勝手に推測させていただく。
さてさてそぼ降る雨の中、現われたる麻羅観音。
日本一!の看板に反して遠目から見る限りはかなり地味。
しかし近づくにつれ、発射寸前の高射砲のごとく天を突かんばかりに臨戦態勢を布いているのが見えてくる。
小さなお堂の前に奉納されている男根。
石、セメント、金属、木…と様々な素材で出来ている。
もちろんこれらは一点モノ。ということは職人さんに作ってもらったりしているわけで、
「すいませ〜ん、でっかいチンコ作ってもらいたいんですけど〜」…って言えますか?
石の男根は亀頭部だけが研磨されていてピッカピカ。
石屋さんに「亀頭だけ磨いてテカテカにして下さい〜」とか言えますか?
セメント洗い出しのチンコ。
細かいイボイボ感が妙にエロティックなマチエールを醸し出している。
これもコンクリ屋さんに「洗い出しでボコボコっとした感じで…」とか指定したのだろうか?
そう考えると相当の覚悟がなければ男根奉納って出来ないっすね。
金属製のチンコ。先っぽだけが妙にテカテカ。
根元は腐食してるのに…
木の切り株に立つ小振りのチンコ。新種の毒キノコみたいだ。
根元に生えているリアルキノコとのツーショット。
奉納男根の前には六地蔵が並んでいた。
…スイマセン。後ろから見たらチンコかと思っちゃいました…
お地蔵さんとしてもチンポに間違われたりして、はなはだ迷惑であろう。
で、間違えついでに提案ですが、これらのチンコ君にヨダレかけと帽子を付けてみたらどうでしょう?
…あ、シャレにならないっすか…
で、お堂の中に入ってみる。
案の定、模造チンコが大量に奉納されていた。
こちらは屋外とは一転して木製のものが多い。
この観音様の由来は次の通りである。
時は下克上真っ盛りの天文20(1551)年、安芸の太守大内義隆が家臣の陶晴賢に謀反を起こされ自刃し、長子も殺されるという大寧寺の変が起きた。
末子の歓寿丸は女装して隠れていたのだが、翌年発見され殺される。
その際、男児の証拠として男根を切られて持ち去られたという、なんとも悲惨な話の現場がここ、麻羅観音の場所なのだ。
里人がそんな歓寿丸を憐れんでお堂を建てたのがそもそもの始まりであるという。
そんな悲惨な由来なのに今はご覧の通り。チンコに悩みと野望を持った人達の集う場となってしまった。
見れば英語で由来が記されていたが、外国人観光客にも人気なのだろうか?いや、ないない。
そして棚には大量の男根マシンガン打線。
これは麻羅観音の少し里よりの売店に売られている「規格品」である。
尿道に穴がちゃあんと開いているトコロがポイント高いですね…
願い事のほとんどは子宝祈願であった。
机の片隅にはプラのバナナが。気持ちは判りますけど。
奉納されているモノがモノだけに心無いいたずら書きも多い。
真剣な祈願とふざけたいたずら書きが狭い堂内でひしめきあっている。しかしどちらもチンコ。
堂内の片隅にはノートが置かれており、ここにも真剣なお願い事が…と思ったらエロ話とか書いてあったりして、もう…
チンポが二つに割れますように、とか観音サマにお願いするな!
俺が観音サマに成り代わって真っ二つに割ったろか!
お堂の左側には中に納まりきれなくなった古いチン型が棚にびっしりと並んでいた。
うむむ。お堂の中のチンコは生き生きしていたが、こちらのチンコは何とも侘びしい。
まるで御役御免!と言われているようだ。
しかも檻みたいだし。
棚のチンコも一杯になってしまい、上へ上へと積まれている。
中には下に落ちてしまい、割れてしまっているチンコも。諸行無常の響きあり、ですな。
チンチン棚の周辺にも様々なチン型が林立していた。
訪れる人もほとんどないであろう山中で繰り広げられる男祭り。
見た目ユーモラスだが、ひとつひとつのチンコに真剣な願いが込められているかと思うとなんだか泣けてきますね。
2006.08.