パナとその周辺/Pana & around
トラジャの墓巡り、今日は
北部の山間部へ行くことにする。
宿のあるランテパオからワゴン車を改造した乗合バス(ペテペテという)に乗り、市場のある
ボルへ。
そこからまたペテペテを乗り継いで山上の村まで一気に登る。
そこから徒歩で山間部の村を歩いてランテパオまで降りてくる、という算段だ。
ちなみにペテペテは地元の交通機関なので料金は激安。え、それでいいの?と思うほど安い。
その代り、席が埋まるまで中々出発してくれないのだが。
しばらく待っていると同じ宿のドイツ人カップルが乗り込んできた。
意気投合し、一緒にトレイルすることにした。
ペテペテは呻りをあげて急な山道を登っていく。
ランテパオ周辺は標高1000m程度だったが、このあたりは2000m近い。
それでも稲作やってるところが凄いっすね。
延々と棚田が続く風景は絶景なり。
1時間以上かかってバトゥトゥムンガBatutumongaという村に辿りつく。
ペテペテが来れるのはここまで。
ここから先は歩きとなる。
緩い上りの舗装道を3人でテクテク歩いていく。
それにしても静かだ。
時折バイクが通るだけで車はほとんど来ない。
たまに聞こえるのは野放しにされている鶏の鳴き声だけ。
そんな道端にも墓が点在している。
うっかりすると見落としそうなところに墓が隠れていたりするのだ。
車道が尽きようが、人家が途絶えようが、どこにでも墓だけはあるような気がする。
そんな中、比較的大型の墓があった。
まるで
吉見百穴の小型版のような集合墓。
吉見百穴も古代人の墓、という説があるが、なるほどこういうことか。と妙に納得。
墓の周囲には多くの花輪やポスターが捧げられていた。
亡くなったのは若者なのだな。成仏、じゃなくて昇天せいよ。
この辺りも大きな岩盤が露出しているところが少なくいので岩に穴を開けて墓を造っている。
何かSFっぽくて好きなんだよなあ。この
岩に四角い穴がポコポコ空いてる感じ。
それにしてもどこまで行っても棚田が続く。
大きな石の上で藁ぼっちのようなものを作っていた。
棚田の所々に大きな平たい石があり、人々はそこを作業場にしているのだ。
洗濯物を巨石にペタペタとはりつけて干したりもしていたな。
別ルートを目指すドイツ人カップルと別れ、独り歩いているとまたしても墓が。
どうやら作りかけの墓みたい。
中を覗いてみる。
内部は四角い部屋になっているが、全て手作業で削られている。
壁面に残ったノミ跡が異様な迫力をもっている。
しばらく歩くとまた工事中の墓があった。
こちらは作業中で大量の木っ端石が入り口から下に排出されていた。
墓の前には簡易小屋があり、奥さんと思しき女性が弁当持ってダンナの作業が終わるのを待っていた。
この
リアンビラと呼ばれる岩窟墓は数m横穴を掘って、さらにそこから数m竪穴を掘るという。
それを全部手作業でやるとなると何年もかかるだろう。
日本の墓よりもはるかに高価な墓かも知れない。
標高は2000m近くあるのだが、赤道直下だから寒くはない。つか暑い。
まるで現代アートの作品のような墓に出会った。
このような墓でも竪穴を掘る関係上、入り口を上の方に設けなくてはならないのだ。
同じ石を逆アングルからみるとこんな。
石、転がり落ちませんか?
尾根伝いにだらだらと歩いていく。
山の奥でも立派なトンコナンを造っているのが凄い。
開けた集落があり、教会が建っていた。
スイスのチロル地方を髣髴とさせるような美しい光景だった。
段々道もハードになってきやした…。
ここにも工事中の墓が。
高台の眺めのいい場所に出た。
眼下にはランテパオの街が一望出来る。
小さい街だと思っていたがこうしてみると意外と大きな街なんだなあ。
観光客がいたので挨拶してみると、今度は隣の宿に泊まっているフランス人の女子2人組ではないか。
何でこんな誰もいないところなのに知った顔にばっかり出会うんだ!
…まあ、それだけ外国人観光客が泊まるところも飲み食いするところも少ないということなんだけどね…。
道は段々鬱蒼としてきた。
こんなところにもお墓あるけど、周囲に誰も住んでないんですけど的なお墓も結構ある。謎だ。
さらに不思議なのが↑ここ。
誰もいない場所に石柱だけが林立している。
明らかに葬儀に使う石柱なのだが、先日訪れたボルのようなザ葬儀場!という雰囲気もなく、まるで遺跡のよう。
何らかの理由で葬儀が行われなくなってしまったのだろうか。
真相は不明だ。
そうこうしているうちに
パナpanaの村に入る。
鬱蒼と茂る熱帯の植物の向こうに見えてきたのは…
ぬぅおおおお〜〜〜!!!!
すげー!コレすげー!
まるで高層ビルじゃないすかー!
しかもフリントストーンとかギャートルズとかの漫画の中に出てくる高層ビルね。
こんな高所に一体どうやって墓穴を掘ったんだろう?
見ればビルの屋上のような部分も人工的に掘られている。
つまり最初に
一番上の崖を内側にコの字型にくり抜いて、そこから
石工が吊り下がって穴を掘っていったと考えられる。
よく見ると最上部には棺や骨も見える。
つまりこの岩壁の裏側からコの字に抜かれた部分に行ける通路があり、葬式の際もそこから入り、上から吊り下ろして墓に棺を納めるのだろう。
まさに
命がけの納棺だな。その様子を想像するだけでゾクゾクしてくるぞ。
それにしても壮大な墓だ。
30m以上ある岩壁を
ど根性で掘り続けたパナの人々が積み重ねた歴史そのものといえよう。
崖の下には骸骨が散乱していた。
あまりにも凄い墓を見たので足が震えてきた…と、思ったら歩きすぎで膝がガクガクしてきただけだった。
ティカラまでは緩やかな下り道。
稲をシートの上で干している。
この光景はトラジャではしばしば見かけた。
まるで道祖神か地蔵のように路傍にポツポツと墓が点在している。
山岳地帯の村に似つかわしくない立派な教会があった。
…パナから歩くこと2時間弱、やっとのことでティカラの村に着いた。
この後、村のおじさんのバイクに乗せてもらい、ランテパオに戻った。
アー疲れた。
夜に宿で再開したドイツ人カップルに聞いたら、ティカラからランテパオへのペテペテがなくて大変だったらしい。
彼らは二人連れだからバイクにも乗れないしね。
次は葬式だ!
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