磐船神社/大阪府



大阪府東部の交野市。大阪府と京都府と奈良県の府県堺が微妙に隣接したエリアだ。

そんな交野市の山中に岩窟巡りで有名な磐船神社はある。

かつては境内を流れる天野川がよく氾濫したというが、近年川自体のバイパスを作ったことで大きく改善されたとか。

確かに神社の近くには川のトンネルがあり、大規模な治水事業を行った様子が見てとれる。



…とはいえ一旦境内に足を踏み入れれば静かなもので、巨大な堰とかトンネルといった工事のことなどどこ吹く風。


凛とした雰囲気が漂っていた。




ここの神社の御神体はこの巨石



幅、高さ共に12mという巨石が微妙なバランスで立っている。


社務所に参拝の由を告げると白いタスキを渡される。

コレを首に掛けて岩窟巡りに行って来い!というわけ。


よっしゃ行ってきますわ!

岩窟巡りとはつまり巨石の合間を縫って進む修行の地で、古くから修験道の行者などがここで修行していたのだという。

各方面から「あそこは凄い!」という話は聞いてはいたのでそれなりの覚悟をもって臨んだわけでして。




ここからが岩窟巡りのスタート。



恐る恐る階段を下ります。




巨大な岩と岩の隙間を降りていく。




真っ暗な地底空間を想像していたのだが、巨石の合間から陽が射し意外と明るい。




丸太の橋を渡る。



もちろん頭の中ではインディージョーンズのテーマ曲が絶賛リフレイン中。



ちらちらと地上の風景が見え隠れしている。この辺、狙ったわけではないのだろうが実に演出が効いている。




丸太橋をおっかなビックリ渡っていくと次に現れるのが押上岩と呼ばれる岩。




巨石が他の岩によって辛うじて持ち上げられている。

今にも落ちてきそう。

味気ないのは承知だが、フラッシュを焚いて撮るとこんな感じ。



さらに修行場は続く。



頼りは目の前にある白い矢印だけ。




最初は雰囲気にそぐわないような気がしていたが、最早この矢印だけが生存のための唯一の目印となっていることに気付いた。

それはつまり信仰の上での唯一のよすがであり、言い換えれば真言や呪文のようなものなのだ。







そしてこの岩窟巡りの最大の難所が現れる。



先に入洞していた方がいらっしゃったのでお手並みを拝見する。

岩と岩の狭い隙間に身体をねじらせて入っていく。



比較的小柄な先行の方々はキャーキャー言いながらも全員クリアしていった。いよいよ私の番だ。




おおお、本当にこんなところに入れるのか?俺。



「足カラ」と書いてあるので素直に足を突っ込んでみる。


その後体のあんなところをあんな風にああしてこうすると、するっと抜けることが出来た。


本当に不思議だが、意外と行けるものだ。



さらに地底とも地表とも判断の付かない世界を彷徨う。唯一の道しるべは白い矢印だけだ。



この辺になると最早何も考えられなくなり、目の前の矢印だけを頼りに淡々とタスクをこなすマシンと化していた。




ひょっとするとこの岩窟巡りは精神状態を極限までミニマル化することを目的としているのかもしれない。



我々は普段あまりにも多くの雑念に苛まれている。

以前ロッククライミングをしている人が言っていたが、自分の生命を差し出して自然に対峙すると余計なことを一切考えることが出来なくなり、目の前の岩の出っ張りだけに集中できるのだそうだ。


そこでは程度の差こそあれ、誰しもが抱えている様々な悩みや煩悩が消え去り、目の前の岩のことしか考えられなくなるのだとか。


この岩窟めぐりもまさに同じ状況で、入洞する前にここの岩窟巡りへの予見とか、そういう「煩悩」が全部消え去り、ただただ目の前の矢印に身を任せるしかない状況にイヤが上でも持ってかれてしまうのであった。



この忘我の状態が古今東西、宗教において非常に大事な状態なようだ。


山岳信仰での極限にまで体力を追い込む修行や延々と回り続けるトルコのメブラーナ、トランス状態におちいることで神託を得る巫女…

こういった精神的、肉体的に追い詰められた状況において人は神秘体験をし、信仰のキモに触れることができる…ということでよろしいんですよね?



私は神秘体験に立脚した信仰というもの自体がよく判らなかったが、ただの矢印が矢印以上の存在に思えたその刹那、信仰が持つ力の正体が一瞬垣間見えたような気がしたのだ。



お、俺、悟り開いちゃったか?


と思えたのもほんの一瞬。

岩の合間に流れる水に日光が射したのを見た瞬間に猛烈に地上が恋しくなってしまった。



ああ、俺は洞窟で何年も修行できる超越した人には絶対なれないなあー、と妙に納得するのであった。





所々に祠があり、各種カミサマが祭られている。

    


そんなこんな巨石と格闘すること数十分、やっと地上に出られた!




ビバ!外気。




外に出てもあちこちに巨石が。

こちらは天の岩戸




数多くの巨石に抱きつき、よじ登り、腹ばいになったりしていると、無機質なのにどこか親しみが湧いたような気がしたよ。


オキ大神とは?




想像以上に深い場所だった。いろんな意味でね。





大満足!











凄いトコで釣りをしてる人がいました。






岩窟巡りの様子も詳しく説明されている磐船神社のサイトはこちら

2010.04.
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