最上稲荷/岡山県



岡山市にある最上稲荷伏見稲荷豊川稲荷と共に日本三大稲荷と言われている。



まあ、日本三大稲荷のひとつと自称するお稲荷さんが日本中には複数あるので何とも言えないのだが。

笠間稲荷、祐徳稲荷、そしてこの最上稲荷がナンバー3入りに凌ぎを削っているといった塩梅だろうか。

他にも当サイト既報の草戸稲荷千代保稲荷なども名乗りを上げているようだ。


ここは稲荷とはいえ最上稲荷山妙教寺という日蓮宗の仏教寺院なのだ。

もっとも日本三大稲荷のナンバー2である豊川稲荷も曹洞宗の寺院であるので「稲荷イコール神社」という概念自体が実はそんなに確固たるものでもないのかも知れない。





巨大な鳥居を潜り、駐車場に車を停める。

休日だというのに車がほとんどない。

うん?入口はどこだ?




見渡してみると物凄~く地味な建物の一画が暗~く口を開けている。

そこに「最上稲荷参道入口」とあった。

え!ここ参道なの?中は暗くてよく見えないよ。


これが日本三大稲荷の参道なんですか?と誰もいないのに思わず独りでツッコミを入れてしまった。






突然思い出した。

昔、テレビで若い女性アナが東京の下町、立石駅前の薄暗い飲み屋街のリポートで「私、ここ怖くて無理です!」と立ちすくんでいたのを。

それを見て笑っていた私が今まさにその立場になろうとは。


「ワイ、怖くて無理っす!」と思いつつもこの暗闇を超えなければ日本三大稲荷に辿り着けないので勇気を出して参道と言う名の真っ暗闇アーケードにダイブした。




暗!マジ怖い!




途中の商店の紹介などが描かれているが、本当にあるのだろうか?




中に入るとザ・レトロな雰囲気の看板が延々と並んでいる。

マジで昭和にタイムスリップしたかのようだ。

しかし不思議な事に次から次へと店が連なってはいるのだが、どこも全く営業していないのだ。




とはいえ幟や貼り紙などは新しいものなので、全くのゴーストタウンという訳ではなさそうだ。




無人のアーケードは延々続く。

ゆずせんべいの看板が多い。




例えるならば、ある日突然街の人がふっ…、と消えてしまったような感じ。




この日は雨だったので余計暗かったのかも知れない。




街灯もなく、建物の隙間から射す外光だけが頼り。




向こうからゾンビがやって来てもおかしくない雰囲気だ。




唯一開いていた土産店の奥では爺さんがこちらを虚ろな目で見ていた。




話を聞こうと思ったがゾンビかも知れないのでやめておいた。


例え人間だとしても、「この参道、なんで全部閉まってるんですか?」と聞くのも何だか気の毒で話しかけられなかったよう。




ゆずせんべいに次ぐゆずせんべい。

最初は気にも止めなかったが、これだけ推されると逆に欲しくなってきたぞ。


暗い参道は延々と続く。微妙に緩いカーブがかかっていて見通しが悪いのでどこまで続くのか全く見当がつかない。




このままねじ式のように延々と歩き続けるのだろうか?俺?




屋根が抜けているところなどがあり、殺伐とした気分がマックスになってくる。




亀の上の石碑。





そうこうするうちに突如インド風の建物が出現した!


やっと最上稲荷の入口に到着したのだ。

あ~、着いたよ!



インド風の建物は山門で、左右には金ぴかの仁王像が護りを固めていた。

    

この仁王像、当サイトではすっかり御馴染みのコンクリ仏師、福崎日精師の手によるものだ。

マッチョイイ~!

ボタンを押すとライトアップする仕組みになっている。

ここまで散々薄暗い路を歩いて来たのでライトアップって素敵!と素直に思ってしまった。



山門を抜けると巨大な本堂が見えてくる。



ここまでの参道とのギャップが凄い。




近代的な鉄筋コンクリート造の巨大な和風建築だ。

しかしここにも人の姿はない。


何だろう?

参道の寂れっぷりとこの超ゴージャスな堂宇の天地ほどのギャップ。

でも同じように人がいない不思議さ。




聞けばここの最上稲荷は初詣にだけ大勢の人が押し寄せるのだという。

つまりそれ以外は訪れる人が少ないので店を閉めているようだ。

なるほど、幟や貼り紙が新しいのも納得がいく。




訪れたこの日はGW最終日だった。

大型連休中にこの人出、良いのか?


奥にも見どころは色々ありそうだが、雨が激しくなってきたので本堂周辺だけを見て引き返す。

雨もだが、今思えばどうも「この先どうせ綺麗な建物が並んでるだけでしょ」感がムンムンだったのも踵を返す一因だったかもしれない。




再び、インド風山門。




裏側には金のキツネが。

逆サイドには銀のキツネがいらっしゃいました。

奉納者は某大手酒造メーカーの創業者でした。

ちなみに表側の仁王像の台座にも同じ某酒造メーカーホールディングスの名が刻まれてました。

ということはこちらのキツネさんも福崎日精師の手によるものなのかも知れませんね。




山門の向こうは再び真っ暗商店街の始まりである。




ちなみに当サイトの姉妹サイトである日本すきま漫遊記さんが20年前にここを訪れている。




そのレポートによれば多くの店が開いており、とても賑やかな雰囲気に満ちているじゃあないの。




わずか20年でこんなに寂れた参道を私は知らない。

しかも同じGWの頃なのに。




一体何があったのだろう?




参道沿いの壊れた燈籠とかを足がかりに庇が延びている。




何か凄いね。

でも雨の日だったので、こんな小さな庇でも非常にありがたかったよ。サンキュ。




庇を貫く石碑。

というか石碑の方が先なんだろうけどね。




またゆずせんべい。

今更ながらだが、この最上稲荷、県内屈指の人気スポットで、県内ではまず知らない人はいないレベルの名刹だ。

それがこれだけ寂れているというのは一体どういう訳なのか?




もちろん正月にしか人が来ない、という側面はあるにせよ20年前にあれだけ栄えていた参道がこんなゴーストタウンになるなんて。




考えられる要因としてはこの最上稲荷への信仰が廃れた可能性。




でも、先程の景気良さそうな本堂を見る限り、それはなさそうだ。




もうひとつはこのアーケードの上、最上稲荷により近い場所に駐車場が新設された可能性




個人的にはこの辺りが正解じゃないかな、と思っている。




激渋な2階建てに無理矢理取り付けたアーケード。

うっとりするほどカッコいいなあ。




開いていれば絶対楽しそうなおみやげセンター。




ある意味、正月に特化した信仰というものを如実に表現したのがここの参道なのだろう。


結局ゆずせんべいはゲットできずに寂しく参道を後にするのであった。





2023.05.
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