ムカサリ絵馬/山形県村山地方
ムカサリ絵馬という絵馬を御存じだろうか? それは民間信仰における故人の追善供養の一種である。 この絵馬は未婚で亡くなった故人(戦死した若者や幼くして亡くなった子供)があの世で独り者では淋しかろうと遺族(この場合、多くは親である)がバーチャル結婚式を挙げて、あの世で行われているであろう結婚式の様子を描いたものなのだ。 故人の結婚式というと青森の川倉賽の河原地蔵尊等に見られる婚礼人形が思い浮かべられるが、意味合いとしてはその絵馬版と思っていただければ良いかと思う。ちなみにムカサリとは山形の方言で婚礼の事。語源は「迎える、去る」の意とも「娘(む)が去る」の意とも言われて、ムガサリともいうらしい。 このムカサリ絵馬と婚礼人形という二つの追善供養の方法は以前からとても関心をもっていた。私にとって東北地方の宗教観におけるイメージを決定づける位強烈なインパクトを持つ供養形態である。 供養人形もそうであったがこのムカサリ絵馬は早世した我が子の供養である。我が子があの世で幸せに暮らして欲しい、という親の切実な願いがストレートに表現された実に心打たれる絵馬なのだ。世の中、絵馬は数有れどこれほどまでに感動的でエモーショナルな絵馬を私は知らない。 このムカサリ絵馬、一般的に山形県の中東部の村山、最上地方一帯に伝わるものといわれているので、その幾つかの寺に行ってみた。 写真が多いので4つに分けてあります(順不同)。 1 山寺/山形県山形市 2 唐松観音、六椹観音/山形県山形市 3 若松観音/山形県天童市 4 黒鳥観音/山形県東根市 ※絵馬の写真中に戒名、氏名、住所等が書かれているがそれらはプライバシーの関係上ボカシをいれてある事をご了承下さい。
2003.4.
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