メキシコ珍寺武者修行





呪術市場/メキシコシティ Mercado de Sonora/CDMX




さてさて。

メキシコシティでの修行、お次は市中心街からもほど近いソノラ市場に向かう。



ここは市民が利用する巨大市場のひとつであり、主に動物、玩具、呪術を取り扱う市場なのである。

そう、呪術にまつわる様々なグッズが売られているのだ。ワクワク。


もちろんお目当ては呪術グッズな訳だが、そこへ辿り着く前にそれはそれは広大な動物市場を抜けなければならない。

動物、といっても昆虫から爬虫類、両生類、鳥類、哺乳類各種…とありとあらゆるジャンルの生き物が販売されている。

これはつまり…ペットなのか、食用なのか?

聞いてみると元気に「両方!」と言われたりしてメキシコ人の食文化の深さとアバウトさをリアルに感じたりするのであった…。


ちなみにシティ在住の方はここで(ペットとしての)犬を買った事があるという。ああ、犬は食用じゃないんだ。

でもゲージに入っているハリネズミやセンザンコウはどっち…なんだろう…?




そんな疑問を抱えつつ、呪術市場に辿り着いた。



呪術市場とは主にメキシコの民間信仰のシャーマンが祈祷に使うグッズを取り揃えている市場だ。




↑このような意味ありげな呪具や…




各種ニンニクなど。


見るからに怪しげなモノが積まれた店が延々と並んでいるのだ。

ちなみにこのソノラ市場は基本的に治安が余りよろしくなく、スリが非常に多いので注意されたし、と某ガイドブックに書かれていた。

なので、撮影は最低限にしましたので画像が少なくてスミマセン的な感じになってます事を先にお詫びしておきます。


ひったくり予防策としては事前にカメラのメーカー名やレンズのラインなどを全部パーマセルで隠して、超ダサいシールとかベタベタ貼ってすっごく安いカメラっぽくカスタマイズして撮影してました。

ちなみに後年、そのまま中古カメラ店に下取りに出したら凄い安値を付けられました。変なシールが一杯貼ってあるから。

もちろん剥がし直して再下取りしてもらいました。グッバイ、ロドリゲス(カメラの名前ね)。






で、ちょっとビビりながらカメラを構えていると…



店のあんちゃん達が「お!俺らを撮ってよ!」とノリノリな感じで撮影に応じてくれた。

おお、そんなに治安の悪い所じゃないんか!色々撮らせてもらいましたよ。




最初に目についたのが棚に並ぶ様々なパッケージの箱。




これらはみな石鹸である。

願い事別に様々な石鹸がある。

コレを使えば願い事が叶う、という訳。




小分けの袋には目的別のパウダーが入っている。

例えば好きな相手の飲み物にこのパウダーを混ぜて飲ませたら自分に好意をもつ惚れ薬だったり。

お金持ちになるパウダーや望みが全て叶うパウダーなど色々ありました…。




さらにブードゥーの呪術に使う人形や




得体の知れないパウダーまで。リンピアオーラとある。

リンピアとはお祓いとか除霊とか憑き物落としのような意味で、人に取り憑いたそういうモノを落とす儀式の事を指す。

これは後に詳しく述べる。






他にも男女が抱き合うパッケージのオイルが並んでいる。

用法は各自想像してください。





ゴルゴ13に出てきそうな骸骨の神様。

これはサンタ・ムエルテといい、一見死神にしか見えないが、メキシコで信仰されている女神だ。

とはいえカトリック教会からは完全に邪教扱いされており、認められていない。


ところが、メキシコの民衆、特に麻薬業者の間で熱心に信仰されている。

つまり麻薬マフィア達のダークヒーローなのだ。



何故かアフリカの呪術人形などもある。

メキシコの民間信仰に留まらず、ブードゥーやマクンバなどの黒魔術の人形や身体中に釘が打ち込まれてハリネズミみたいになっちゃってるアフリカのミンキシ人形なども売られていた。

つまり世界中の黒魔術の見本市みたいなところなのだ。




店先に何気なく吊るされているのはエイの干物

これも呪術に使うらしい。



…と、ここまでは場外市場的な感じだったのだが、いよいよ市場の中に入っていく。



緊張しつつ中に入りますよ。




中に入ると様々な店が並んでいる。



カトリックの教会ではあまり見られない呪具や神像が売られている。



↑不穏な神像が並んでいる。これらはメキシコの正統カトリックとは別の民間信仰神だ。

例えば右側にいる骸骨が赤いマントを着た神像。これは先に紹介したサンタ・ムエルテ。

左側に赤いネクタイのスーツのオジサンが見えるだろうか。

これはヘスス・マルベルデといい、日本で言うと鼠小僧のような義賊で、今ではマフィアにとっての聖人なのだ。

もちろんヘスス・マルベルデもバチカンからは認められず非公認聖人なのだが、メキシコでは絶大な人気を誇っている。


インドで発生した仏教が日本でかなり違う宗教に変容してしまったケースを持ち出すまでもなく、メキシコの信仰シーンはヨーロッパのそれとは明らかに違うのである。


呪術や黒魔術といったバチカンが認めない古くからの宗教とカトリックが混ざり合った混沌とした宗教がそこには厳然と存在していたのだ。



場外の市場に比べて場内の市場の売り子は女性が多い。

そして撮影をしようとすると断られるケースも多かった。

これはこの市場に限らず教会や道端の物売りにも共通していたのだが、案外撮影を嫌う人が多かった。

撮られる事で何らかの不都合が生じるのだろう。

それは判らないので、とりあえず撮影を拒否されない店で写真を撮らせてもらった。




得体の知れない動物の干物。

中南米ではリャマの干物を神に捧げる事がある。それなのか?




市場に大量に積まれていたハーブ。

もちろん食用ではなく、これらをブレンドして束にしてリンピアに使うのだ。


で、リンピアって何よ?て事なんですけど。

先程も少し述べた通り、リンピアとは除霊とか憑き物落としのような意味で、要するに人に憑いた悪いモノを落としてくれる民間信仰のお祓いなのだ。




これはやるしかないっしょ、ということでリンピアをやってくれる「魔女」を探してみることにした。

事前のリサーチではソノラ市場に行って「この中で魔女さんはどなたですかー?」って聞けばほぼ全員が手を挙げる、筈だったのだが、現実は厳しい。


あっちこっち聞き回ってようやく一人の「魔女」に出会えた。



実際にあった魔女は市場の一画で呪術グッズの店を構えている若くて元気な女性だった。

こっちが勝手に杖をついて黒マントを着てる月影先生(参照:ガラスの仮面ね)的な人なんでしょ、と想像していたので面食らったが、本物の魔女だ、と自分で言っているのだから間違いない。

早速リンピアをお願いすることにした。



チョット待っててねー。と言うと魔女様は何処かに消えてしまった。



代わりに他の人たちが店全体をブルーシートで覆い始めた。

どうやらここでリンピアをするようだ。

そして他の人には見られないように行うのだ。



おお、ブラックマジックっぽくてドキドキしますね。





しばらく待つと「魔女」様がやってきた。

以下は撮影できないので文章でお楽しみください。



魔女は何らかの念仏的なモノを唱えつつ、片手にハーブの束を持ち、おもむろに「被験者」の身体をバンバン叩き始めた。

結構ハードに叩いてたねえ、うん。


その後、葉巻を火のついた方で吸い込んだり、その煙を「被験者」の身体にバンバン吹き付けたり。

さらにテキーラを口に含み酒しぶきをブシューっと浴びせたり、様々な儀式を行っていった。



最後に全身を叩いたハーブの束を被験者に砕け散るまで踏ませてリンピアは終了。

これで身体に憑いた悪いモノを取り除いたことになるそうな。










葉巻を逆に吸ったり、飲むはずの酒を吐きだしたり、日常とは逆の行為が多かった印象。



これは日本で人が死んだ際に着物を左前にしたり、草履を左右逆に履かせたりする行為によく似ているなあ、と思った。

通常とは逆の行為を敢えてすることで、常識の通用しない世界を造り上げ、その世界観に入り込むことで普通の世界では見えない何かを捉えようとする行為、なのだろう。



大変貴重なものを見させてもらった。ありがたやありがたや。




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