箱崎八幡神社/鹿児島県




さて。



2014年の正月の話である。



この年は忘れもしない元日に能登半島で地震があり、2日には羽田空港で航空機が衝突し炎上、3日には小倉で火災と、デイリーで大事件が続いた。

この一年一体どうなるんだろう?

…というニュースを奄美大島の宿でぼんやりと観ていた。



奄美の話は追々するとしてその後行った鹿児島の話でもしましょうか。




鹿児島市内のゲストハウスに投宿し、居間でダラダラしていたら同宿者から篠山紀信が死んだ、という話を聞いた。

能登、羽田、小倉と比べたら申し訳ないが個人的には結構衝撃的な訃報だった。

同宿者の「紀信が全部の厄を持って行ってくれれば良いですねえ~」というコメントがシャレにならない程、リアリティを感じたのを今でも鮮明にに憶えている。



そんなお先真っ暗感な正月。



奄美では墓とか海とかジャングルとかばっかり行ってたので初詣に行ってないじゃん!

こんなに暗いニュースだらけなんだからせめて景気の良いところに初詣に行こう!と思いチョイスしたのは…


鹿児島県北部の出水市に箱崎八幡神社という神社。


古くは薩摩藩の島津家とも縁のある古刹だ。

ところが今、その神社が面白い事になっているという噂を聞きつけたので行ってみることにした。




県道沿いには結構な規模のツルの群像のオブジェが。

何だこりゃ? と思ったらそこが神社の入り口であった。




鳥居の手前には巨大な鈴があり「日本一の鈴」という文字がチラリと見える。

ツル? 鈴?? 一体どんな神社なんだ?




駐車場に車を停め神社に向かう。

訪れたのはまだ松の開けない頃だったので、大勢の初詣の参拝客が訪れていた。

それにしても田舎の初詣ってヤンキーっぽい集団が多いよなあ。

やっぱり季節季節のケジメはちゃんと付けるタイプなのかな。




入り口には一対の巨大なツルのオブジェ

3メートルは優に超えるサイズだ。

まるで狛犬や仁王像のように左右に立って、来る者を睥睨している。




しかも顔が赤くて怖いぞ。



そういえば、出水市はツルが越冬のために飛来する土地だと聞いたことがある。

それで先程の県道沿いにもツルのオブジェがあったのか。




大きなツルを超えると門が見えてくる。

近づくとその門の中に巨大な鈴が下がっていた。

コレが日本一の大鈴なのである。デカい!



直径3.4メートル、高さ4メートル、重さは5トンもあるという。

金箔が貼られた表面には、やはり飛び立つツルのレリーフが彫刻されていた。

この巨大な鈴は、門と一緒に平成十年に作られたものだ。

伊勢神宮の鎮座二千年と上皇陛下の在位十年、そして神社本庁設立五十年を記念して作られたという。

見上げれば巨大な鈴から綱が下がっており、その綱を引っ張ると鈴が鳴らせるようである。




巨大な門を潜ると境内の様子が見えてくる。

ここもまたカオスな雰囲気に溢れている。



参道の左側には、ツルを抱いた神様の像が立っている。

鶴神様と記されているが、祭神の武内宿禰がモデルなのであろう。

武内宿禰がツルを抱いたエピソードなど聞いたことはないが300年以上も生きたという日本最長寿の神様と鶴千年とも言われるツルのコラボは長寿祈願には持って来いの組み合わせといえよう。



さらにその下にもツルがおり、撫でて願いを込めるようだ。




傍らには亀の像も。

説明書きによると、かつては出水にもカメが産卵のために浜にやって来たという。

日本最長寿の神様と千年生きるツル、さらに万年生きるというカメという長寿トリオが一堂に会する長生きスポットなのだ。

まあ、カメは後付けっぽいが。




さらにツルとカメの間には、日本で2番目に小さい鈴が。

日本一大きい鈴の次は日本で2番目に小さい鈴とな!……こうなると日本一小さい鈴の存在が気になるところだが、安心してください!ちゃあんとこの神社にあります。




大さわずか数ミリの鈴。

金銀一対になっている。





あまりの情報量にクラクラしてしまい早くも休憩所へ。



売店で甘酒を買って一休み。




しかしここでもツルの渡来の説明や民具の展示などがあり、精神的にはあまり休めない感じ。




売店を見てみると、日本一の鈴を象ったお菓子が。




休憩所を出ると、参道の反対側にさらに巨大な鈴の形の建物がある。




しかし、気になるのは手前の神馬の下にあるツルのオブジェ。

一口にツルといっても大きさや見た目も結構違うのだ。ナベヅル、カナダヅル、クロヅル、マナヅル、タンチョウ……。




後日調べてみると、出水は日本一のツルの越冬地なのだそうだ。

その数は1万羽以上だという。

なるほど、それなら神社が街の象徴である「ツル推し」になっても無理はあるまい。




さて、ツルの次は鈴だ。

宝物鈴殿という鈴型の建物。

コレが日本一大きい鈴なのでは?と思うが、基本鈴とは音が鳴るもの、というルールらしく、ここはあくまでも建物という扱いなのだ。




愛子さま誕生記念とあるので20年ほど前に造られたもののようだ。




階段を上り中に入ってみよう。菊の紋が眩しいぜ。




内部は案の定、円形(正確には八角形)の部屋で、この神社にまつわる宝物が展示されている。

古い棟札や三十六歌仙の絵など。




そしてお待ちかね、日本一小さい鈴

これも金と銀で対を成している。

2ミリほどの鈴は肉眼では確認しにくく、虫眼鏡が置いてあった。

こんなに小さくて本当に鳴るのかな?それにしてもこの神社が鈴にこだわる理由が良く判らない。


ツルは判った。出水という街のシンボルであるから。


一方、鈴はどうだ? 特に鈴産業が伝統工芸でも鈴生産が盛んな訳でもないだろうに。

そういえば門にあった日本一の鈴の傍らに「成せば成(鳴)る、大願成就の大鈴」とあった。

え?ダジャレ?

もしかしたらこの神社とも縁が深い神楽でも鈴が使われる事から鈴を推したのかもしれない。

あくまでも想像です。




参道沿いには1メートル程の鈴のオブジェがある。

これは鈴の真ん中の狭い穴を潜り抜けられれば願いが叶うというもの。




境内には様々な顔出し看板が。




拝殿には初詣の参拝客が数名いた。




木に結ばれてた大量のおみくじ。




拝殿内では祈祷を受ける人達が神妙な面持ちで座っていた。

入り口にはまたしても鳥のイラストが染め抜かれていたので、またツルだろうなあ、と思ったがよく見たらだった。



アレ?ここはツルじゃないんかい!

…と思わずツッコミを入れそうになったが、考えてみれば八幡神の遣いは鳩なのだ。






それにしてもツルと鈴に溢れまくった神社だった。

どちらも縁起のいいモチーフだけにきっと参拝者もいい気分で帰っていく事だろう。

そういう意味ではカスタマーの需要を充分に満たした神社、といえよう。




暗い世相を福飛ばすラッキーアイテムてんこ盛りの神社で初詣をしていくらか明るい気持ちになりましたよ。



サンキュです。






2024.01.
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