常念寺/兵庫県尼崎市
大阪と神戸に挟まれた尼崎市の臨海地域は工業+港湾地帯である。その工業地帯に程近い阪神大物駅近くに常念寺という寺がある。 大物は工業地帯といえど、この寺の周囲は一寸した住宅地で比較的落ち着いた雰囲気を醸し出している。 さて、そんな住宅が並ぶ比較的狭い道路に面して常念寺の入口が見える。 これが外から見た常念寺である。 道が狭く引きがないので全景は捕れなかったが、その雰囲気はお判りいただけるかと思う。 中央に楼門、手前に鐘楼、奥には三階建ての太鼓堂と呼ばれる建物。 その三つの建物がぴったりくっついて建っている様はチョット普通じゃない何かを感じさせてくれる。 入口には「堂内仏教館」をはじめとした魅力的な仏像群の案内があり珍寺心をそそりまくるのであった。 鐘楼には人が通れる隙間もなく車がぶち込んであるので太鼓堂の脇から境内に入る。 これが境内の様子である。狭い敷地なのだが仏像が目白押しだ。 一番目立つのは金色の大観音。4メートル位だろうか。 これは尼崎観音といい国内物故者供養と阪神淡路大震災供養の為に平成12年に建立されたものだ。 大観音の右手のお堂には木像の薬師如来。その左右には小さな日光月光十二神将像が並ぶ。 対面には中華スタイルの弥勒菩薩。これはFRPなどでなく木製に金箔張であった。 で、本堂に入ってみる。 本堂の入口には「尼崎観音の寺として新しい出発!生まれ変わろう新しい寺院へ!」という貼紙が貼ってある。 この寺は平成7年の阪神淡路大震災により亨保年間に建てられた本堂が半壊し、それを復旧したのだ。 しかし、単に以前の姿に戻っただけではなく、震災での倒壊を機にベクトルを珍方向に向けてしまったところが並みの寺ではない。
本堂の内陣左には半丈六というから2.4メートルの阿弥陀如来像がある。金ぴかの立派な座像だ。大仏の規定である座像で半丈六(8尺)をクリアしているので大仏と呼んでいいギリギリのサイズであるがサイズ以上に立派な印象があった。 大仏の手前に香炉や燭台を置く机は素敵なお嬢さんが二人で支えている。 この本堂の左と裏手には回廊状のミニ仏教博物館があり、報恩堂と呼ばれている。平成11年10月10日開館とある。 震災から4年9ヶ月後の事である。この年月がこの寺の復興への助走期間ということになるのだろうか。 本堂の左、L字型の報恩堂。突き当たりには屋内型のミニ墓地が。 ミニ墓地のあるコーナーを曲るとずらりと仏像が居並ぶ展示コーナー。 そこで見た事もない信仰装置を発見! 棒に通された木製の玉が数珠繋がりに並んでいる状態のもので、説明書きによると報恩数珠玉といい2回まわして進むのだそうだ。 つまりチベットやネパールにあるマニ車のようなモノなのだろう。勿論2回といわず何回転も(しかも高速全力回転)させながら進んで行く。 これが様々な仏像の展示と共にずーっと続いているのだ。 展示の中にミャンマーのインレー湖のファウンドーウーパゴダの本尊のレプリカがあった。 本物は信者が金箔を貼り付けまくっているので金の雪ダルマが5体あるような状態なのだがここのはちゃんと原形をとどめている。 こんな形だったとは初めて知りました。 さて、展示の最終コーナーには報恩数珠玉をさらにバージョンアップさせたようなモノが。 77個の数珠玉を中央手前から反時計周りに一個一個回していくというもの。 説明書きには親玉を回さないで下さいとある。親玉とは手前の一番真ん中の玉の事である。 う〜む。適当に回しとけば適当に御利益があったりするのかと思ったがどうやらこの算盤のような数珠玉、深遠なる作法があるようだ。 ということはそれなりの宗教的理論というか理屈があっての信仰装置ということなのだろうか。 単に「回るから面白くていいや」的なノリではないようである。 そこに存在する理屈なぞあたしにゃ判りませんけど、ただ算盤みたいな玉を神妙に回す事で何らかの御利益なり信仰上のメリットを得られるという合理性が存在する事だけは確かなようである。良く判らないがその非合理的なモノを求めるための合理的な装置という存在に凄く惹かれました。 本堂を出る。本堂から外を見るとこんな感じ。 写真左手の赤い幟のトコロに大観音、楼門と鐘楼の間の小さなお堂に木像の薬師如来がいる。で、画面左外に弥勒菩薩がいるという位置関係になっている。 太鼓堂は昭和55年建造。二階建ての太鼓堂は良く見るが三階建ての太鼓堂は珍しい。 鐘楼と楼門と太鼓堂は全てつながっているが太鼓堂だけは独立して出入り口がある。 で、中央の楼門二階には外階段を登っていく。 楼門二階のガラス張りの部屋の中には阿弥陀仏がいた。6尺だそうだ。 中国の玄忠寺というお寺から入手したそうだ。 この楼門も阪神大震災にて倒壊し、復興にあたりこの阿弥陀仏を勧進したようだ。 ガラス越しに外を見れば大観音や本堂が良く見える。 狭いながらも幾つかの建物が複雑にからみ合うこの寺。 建物同士をも少し有機的に連結したら忍者寺みたいな複雑な寺になる可能性も秘めた愉快な寺であった。
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2003.5.
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