ひんここ祭り/岐阜県美濃市
長良川の畔、「うだつ」のある古い町並みで有名な美濃市の山あいの大矢田神社でひんここ祭りという人形芝居の祭りがある。 ひんここ祭り・・・名前からしてすでに脱力感溢れるイメージがあるが、実際、そこでおこなわれる祭りは、そのネーミングを遥かに凌駕した脱力感に充ち充ちたすんばらしい祭りなのである。 美濃市の観光パンフなどには素朴な祭りとされている。間違いない。 しかし敢えて一言加えさせて頂くならば、これは度を超えた素朴な祭りである。 祭り直前の様子。 神社の神楽殿の前に登場人物がずらりと並んでいる。 そのポンチっぷりったら、もう・・・ お前ら!み〜んなまっとめて男前だぁ〜! この烏帽子を被った人形は神主と須佐之男命の一人(一体?)二役を演ずる。ま、主役ですな。 傍役の農民の皆さん。全部で12体ある。舐めてんのかと思う程、超素朴なお顔だち。 右の人形の頭は新しいヘアースタイルか?と思ったら、弁当持ちで頭に弁当を乗せているらしい。 で、悪役の大蛇。これだけが極端に大きかった。 さて、そうこうするうちに祭りが始まった。 まずは神楽殿に立て掛けられた人形達が操者によって掲げられ山の中腹に組まれたステージに進んでいく。 幕が張られたステージから最初、ひょっこり現れたのは主役の神人形。 最初は袮宜殿として観客の穢れを払うためにソロで舞うのだという。 それにしても先程から流れているお囃子が人形の表情に輪をかけてミニマル。 ひんここの由来ともなっているこのお囃子「ヒンココ、チャイココ、チャイチャイホーイ」と聞こえるというのだが、このフレーズが延々延々延々延々と続くのだ。 特にフレーズ最後の「ホーイ」のところではお囃子方が皆で声をそろえて裏返った声で「ホーイ」とやるもんだから、時間が経つにつれて精神状態もどんどんミニマル化していってしまう。 そんなお囃子に合わせて人形芝居は続く。 お間抜けな表情の農民達が一体一体現れて全員が現れると麦まきを始める。 と、そこに今度は大蛇登場。 農民をひとりづつ飲み込んでいくのだ。 一体一体呑み込まれていく農民達。 皆さんも「ホーイ」のところは一緒に声を出してみるとより一層臨場感が湧いて・・・来ると思うんですけど・・・ この人形芝居、先程のお囃子と連動して動くのだ。「ホーイ」の部分でのみ新しいアクションをおこすものだから進行はかなりのんびりしている。 勿論、農民が登場するのも呑み込まれるのも「ホーイ」のところで一体一体づつやるので、かなり時間がかかる。 「ホーイ」のところで登場する人形がいちいち上に飛び上がるのが結構お気に入り。 そしてやっと全員呑み込まれたところで、先程袮宜殿として登場した人形が登場。 今度は須佐之男命としての登場である。 ゆる〜いバトル(「ホーイ」の部分で一手づつ攻撃する)の末、大蛇の腹を裂く須佐之男命。 すると呑み込まれた農民達が一人ずつ中から飛び出して来る。 で、全員揃ったところでぬる〜い喜びの舞いを踊って大団円、という感じが全体の流れです。 見終わった頃には、はっきりいってアタマが腐るんじゃないかと思う程、のんびりとした、ある意味凄い祭りだった。 このユルさ、ヌルさ、尋常ではない。 ひんここ保存会の皆様には是非ともこれからも変わる事なくこのスローペ−スな進行を堅持していただきたいものである。「途中の構成、タルいから巻き入れちゃってさあ、蛇の腹、バミっといて〜」てな事がないよう、毎年キッチリ観客の皆さんの脳髄を溶解させていただきたいと切に願う次第です。以上、簡単ですが挨拶に代えさせて頂きます。 神社の隣の柿の木にはひんここサウンドで腐っちゃったと思われる頭が吊るされてました。 ちなみにこの日から向こう一週間はひんここサウンドがリフレインしてました・・・ ああ、今思い出すだけでも、あのサウンドが・・・
2002.11.
情報提供はももぞうさんです
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