藤瀧不動尊/群馬県




トロッコ列車と足尾銅山で有名なわたらせ渓谷鉄道。

その花輪駅の近くにひっそりと不動サマを祀る寺がある。




南向きの斜面に広がる花輪の集落の北外れに位置するその寺の名は藤瀧不動尊という。





民家と民家の隙間のような、気づかなければ通り過ぎてしまいそうな地味〜な参道を進んでいくと石段が連なっており、登って行くと段々山が深くなってくる。





石段の先には本堂である不動堂がポツンと建っていた。


民家の間を抜けてわずか数分なのに人外魔境っぽい雰囲気になってきたぞ。

もっとも上を見るとこの本堂がある谷をまたぐように国道が走っており、時折トラックがうなりを上げて爆走しているのだが。



所々苔むした様子は普段訪れる人が決して多くないことを伺わせる。

扉も閉まっていたので中の様子を伺うことも出来なかった。





…と、右奥にさらに階段があるのを発見。とりあえず行ってみよう。


さらに山が深くなってきたぞ。




そこに突然現れたのがコレ。




ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ〜!





亜鉛メッキされたいわゆるトタン板で出来た無数のヒトガタだった。


誰もいない山中で出くわすにはあまりにも衝撃的な奉納物群だ。


見ればヒトガタだけでなく、手型や足型もたくさん奉納されている。




どれもほぼ同じカタチだ。



ほとんどの奉納物には奉納者名や祈願文などは記されていない。




こうなってくると何の目的で奉納されたのかも判らない。


手型、足型の奉納はそれぞれの病気平癒や健康祈願なのだろう、と想像できるが、ヒトガタはどうだろう?

何のインフォメーションもなく脳天に穴を開けられ鉄パイプにぶら下げられているその姿を見ているとたったひとつの言葉しか頭には浮かばない。


…生贄…





もちろんわが国には人をかたどった紙を拠り代として水に流したりすることで災厄や病を除けるという概念があり、ここの奉納もそういった意味合いなのだろう、とは思う。



思う、思うのだが…

何だか生贄っぽくないですか?

さらに言えば

何だか宇宙人っぽくないすか?



微妙に苔の付いた様子は緑色の血液っぽいし、妙に宙に浮いてるっぽいし。何より表情がない不気味なところとか。




薄暗い森の中で晩秋の木漏れ日に浮き上がったトタンのヒトガタ。

それはどこか目の前にリアルに存在するものとは思えない、妙に浮世離れした存在なのだ。






いうなればAR(拡張現実)のような現実とバーチャルが混ざり合ったような光景をタブレットのモニター越しに見ているみたい。





宇宙人のような生贄のようなARのような不思議な奉納物だ。






ヒトガタ奉納の先には滝がある。




この滝が奥の院、ということになっているのだろう。



滝の周辺には金属製の剣が数多く奉納されていた。




それにしても何なんだろう、ここの奉納物のメタル率の高さ。




これはあくまでも私見だが、地形的に湿気が多い場所だけに紙や木ではすぐに腐ったり苔むしたりしてしまうので金属を採用したのではないだろうか?


奉納されている剣やヒトガタのほとんどが鉄ではなくアルミ、ステンレス、ブリキ、トタンといった腐食しにくい金属なのでそう思った次第。






薄暗い中、小さいが綺麗な滝が水音を上げていた。なるほどこの滝の品位は不動明王を連想させるには充分だ。







滝の脇には小さな不動明王の石像が祀られ、綺麗な花が手向けられていた。

少なくとも一両日中に手向けられた花だ。

あまり人が来ないのでは、という先ほどの推理は見事にはずれていたことになる。



私が訪れた時は風雨で屋根が吹っ飛んでいた。



単管パイプに取り付けられたヒトガタは全てステンレスの針金で吊るされている。

やはり腐食防止のためのメタルヒトガタなんだろうな。




改めて振り返ってみる。



実際にはこんな感じで、結構こじんまりとしてるんです。






でもグーグルからメガネ型の端末とか出るんでしょ?今度。そんなの付けてて「ん?」と思ってついついメガネ外したら本当の光景だった、なんてことはしょっちゅうありそう。

つかそんな思わず2度見3度見しちゃうような光景をもっともっと探し出したいもんですなあ。






比較的最近の様子はこちらを参考にされたし。

2011.11.
珍寺大道場 HOME