千葉県いすみ市。
外房のほぼ中央にあり平成の大合併で誕生した新しい市である。
そのいすみ市の旧大原町に七福天寺という、かなり変わった寺がある。
ロケーションは海岸のすぐ近くで、この寺からも海岸へ歩いていける。入口には海岸へ行かれる方へなどという看板も掲げられているが潮の流れが速いそうで遊泳はあまり推奨していないようだ。
だらだらとした坂道を登っていく。
と、突然現れるのはこんなお堂。
うひょ〜、えらい高いところに造ったなあ。
昭和40(1965)年に開山したというこのお寺、老朽化に伴い平成8(1996)年に建て直した新しいスタイルの仏堂。
設計はこちらのお方。
京都の清水寺のような懸け造りの仏堂の現代的な解釈、ということになるのだろうか。
懸け造りとはいえ脚の部分はV字型が交差する形式。
見た目、かなり不安定な構造のような気がしないでもないが、まあ、立派な一級建築士が構造計算をして建築許可を得ていいるのだろうから大丈夫なんでしょう。
SF映画に出てきそうな建物だ。なんだかワシャワシャ歩き出しそうでチョット怖い。
開祖、池田仲治郎氏とその奥方の像である。
さらに坂道を巻いて上っていくと先ほどのお堂の上部に至る。
下から見上げたら凄いインパクトだったのだが、横から見た建物自体は何と言いますか…地場産の野菜とか海産物とか房総キティとかまりもっこりとかが置いてそうな…
ひと言でいうと道の駅っぽいんですけど。
懸け造りになっているのは建物の右、丁度手摺が付いている部分だ。
白い砂利が敷かれている先が入口となっている。
寺には誰もおらず中に入って参拝は出来なかったので外から参拝させてもらう。
入口正面は格子戸になっており、中の様子を伺う事が出来る。
覗き込むと、そこはちょうど祭壇の真横で、七福神が祀ってあった。
考えてみれば七福神が本尊のお寺というのも珍しい。
ここでは七福天と云うそうだが、参堂に並んでいたノボリにはめっちゃ七福神と染め抜かれてあったので、七福神と七福天に明確な区別はないのかもしれない。
格子戸の脇にスリッパが置いてあり、履き替えてお上がりください、とあるので遠慮なく上がらせてもらいますよ。
テラス沿いに歩いて行くと祭壇の正面に当たる部分だけがガラス戸になっていた。
建物の角度にあわせてガラス戸も若干ハの字になっている。で、賽銭箱までハの字なところが凄い。
ガラス戸から中を覗くと、正面の祭壇に先ほどの七福神が。
そして不動サマの掛け軸、密教系の仏具、太鼓などが見ることができる。
振り返ればテラスからは太平洋が良く見える。
方角的には真東。つまり御日様がバッチリ正面から上がる、という塩梅なのだろう。
私はこのような現代建築の寺院はあまり好きではないのだが、海を臨むロケーションならこんな寺もアリかな、と思った。
建物を出て脚の部分を見てみる。
柱は継いでおらず全部一本モノだった。何でも総檜造りだそうで。
後から知ったのだが、この建物、テラスの部分の壁が可動式になっており、全部オープンにする事が出来るらしい。
七福神さん達もさぞかし爽快な気分になることであろう。
よく考えてみたらこの建物自体が宝船をイメージしているのかもしれないですね。
さて。
七福神に別れを告げ蘇鉄が並ぶ緩やかな坂を下りていくと海岸に出る。
春とはいえ、やや汗ばむほどの陽気。房総の割には奇麗な海を楽しんだ(泳いだわけじゃないよ)。
海岸の端にある岩山を見てビックリ。
ぬあんと窓があるではないか。
海食洞窟を広げたモノなのか、岩を最初から刳り貫いたモノなのか一から刳り貫いたものだとしたら相当のガッツである。
ここは七福天寺の境内、ということはもしかして修行窟なのか?
中に入りたかったのだが、残念ながら飛び移れませんでした。
俺にもう少しの身体能力とガッツさえあれば…
2008.4.
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