人形道祖神/横手盆地


秋田人形道祖神巡りもいよいよ最終ステージである。

秋田県北部の米代川流域からググっと南下し、南部の横手盆地に足を運んだ。

ここも米代川流域に負けず劣らずの人形道祖神密集地帯である。

 

横手盆地といえばかまくらと稲庭うどん。

夏なのでかまくらは見られなかったが(どうしても見たければかまくら館に行けば見られますが)、稲庭うどんはがっちりでっぷり堪能してきました。

で、最近のニューカマー横手焼そばなども食しつつ胃袋を麺類で充たしつつ人形道祖神見物に出かける。

 

最初に訪れたのは湯沢市の岩崎にあるカシマ様

神社の一画にある水神社。ここにカシマ様があるという。

 

神社の外壁には「水神社」と書かれた奉納札がたくさん下がっていた。そんなに書かなくても・・・

で、その神社の脇にトタン小屋があった。中に入ってみると・・・

 

おおお、おりました。かなり大きい。3メートルはあろうか。

 

ここの岩崎のカシマ様の特徴は全身がワラで作られていて、長い髪の毛までワラで作られている。

長い髪の毛の奥には木の面が付けられている。これまで見て来た人形道祖神は木で独立した頭部がつくられていたが、ここのは面である。

しかもめっちゃ恐い。

これまで見て来た人形道祖神はどちらかといえばユーモラスな表情のものがほとんどだったが、ココの面は相当恐い。マジ具合がビッシビシ伝わって来ます。

着膨れしたこのような胴体と面の表情のアンバランス具合がまたいいですね。

 

 

奥にもうひとつカシマ様がいた。

「アメリカでおおワンダフル鹿島様」かつてアメリカでこのカシマ様が紹介されたという。その際「おおワンダフル」てな事になったらしい。

それにしてもベタな句ですな。

ちなみにこのカシマ様は国立歴史民俗博物館にもそのレプリカが展示されている、いわば人形道祖神のキング的存在なのだ。

カシマ様の隣には石の道祖神(チンコ石)があった。

 

 

カシマ様は今でも年に一回程のペースで作り替えられているのだろう。手前にかつての身体が積まれていた。

こちらの面は赤く塗られていてやっぱり恐ろしげだった。

 

 

 

国道13号沿いにドーンと立っているカシマ様。

手足が太くどっしりとした印象がある。

身体のパーツとしては乳、ヘソ、陽根が別にワラで編まれて取付けられている。

子孫繁栄と五穀豊穣を祈る上で重要なパーツだ。地面に付きそうな陽根が不必要に大きいのもいかにも道祖神らしい。

面を見ると比較的新しいもののようだ。国道沿いという場所からしてもしかしたら観光用に新しくしつらえたカシマ様なのかもしれない。

 

帯にさされた造花が印象的だった。

 

一方こちらは大森町の末野という集落の橋のたもとにあるショウキ様

どうやら横手の人形道祖神は大型で大きな木に立て掛けてあるタイプのモノがポピュラーなようだ。

 

ここのショウキ様は顔までワラで作られている。

目鼻口眉耳は別パーツで作られていて黒く色付けされているが、木で作られた頭部よりもマヌケ感が漂い私は好きでした。

 

短い足、短い手、ズンドーの胴体、これで集落の安全は守れるのだろうか?

大きさだけは3メートルと立派だが、何ともユーモラスな立ち姿である。

頭の真下に真直ぐな棒を立てる事によってかなり不自然な体勢になっている。これをみると人間の背骨は彎曲しているのだ、という事を改めて実感する。

あっ、ワラの内側は杉の葉が詰めてあるぞ。


ところ変わって、美郷町の本堂城回にある八ツ目川のショウキ様

 

ここのショウキ様の行事は一時途絶えていて面だけが木に架けられていたという。

平成6年に人形作りが復活し、再びかつての姿が戻ったという。

顔はあくまでも面である。全体的なプロポーションは横手盆地に良く見られる寸胴短足タイプ。

特徴は大きな角。鬼やなまはげをイメージしているのだろうか。 

 

 

同じ美郷町の本堂城回の館間にもショウキ様がいるという。

かつて城があったとされる城跡には今でも壕の跡がよく残っている。もっとも壕跡以外は田畑になっているが。

そんな城跡の一画に小さな森がある。

この森の中央に立つ大きな木の幹に3メートル以上はある大きなショウキ様が立っているのだ。

ここも一時人形作りの行事は途絶えていた。その時は木の幹に箱が掛けられその中に面だけが納められていたという。

巨木にこんな面が箱に入って掛けられていたという図は想像するだけで可笑しい。

 

ここも八ツ目川のショウキ様同様、細長い角が生えている。木の幹に直接屋根をしつらえているところが面白い。

巨木に立つその姿は最早、集落の守護神というよりは森の精の様でもある。

まるでお伽話に出てきそうな神秘的な佇まいだ。

でも脇毛付き。

 

 

森のすぐ近くにあった地蔵堂の内部。この細長いモノも秋田では良く見かけた。

同様のモノを青森や山形などでも見た事があるので東北地方では比較的ポピュラーな奉納グッズなのだろう。

 

 以上で人形道祖神巡りはおしまいである。

勿論、秋田県下にはもっとたくさんの人形道祖神があり、もっと様々な種類もあるという。

皆さんも秋田に行かれた際は村の入口や神社の境内などをチョット見てみて下さい。

そこにはビックリするほどインパクトのある人形道祖神がいるかもしれませんぞ。

 

当然の事だが、これらの人形道祖神は地元の人達の努力によって成り立っている。

一見、見落としがちな路傍の人形道祖神の背後には絶えまない強い意志が存在している事を忘れてはならないと思う。

 


おしまい

 

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