今日はダナンからベトナムの古都、
フエまで足を延ばす。
フエはベトナム最後の王朝である阮朝の都だった街で、色々見どころはあるのだが、今回はフエの中心地の王宮とかは一切無視!
代わりにヘンチクリンなところばかり廻ってきた、というわけ。
唯一阮朝関連で訪れたのは
カイディン帝廟。
阮朝の12代皇帝として国を治めていた皇帝の廟である。
カイディン帝の在位は1916年から1925年の9年間。
しかしこの時期は既にフランスの植民地となっており、実際には傀儡皇帝として実権はなかったと言われている。
フランスの庇護のもと贅沢な暮らしをしていたというカイディン帝、その廟も歴代の皇帝の廟とは一線を画している。
11年かけて建設された廟は規模こそ小さいもののその装飾は目を見張るものがあるのだ。
カイディン帝の功績が刻まれた碑が納められた碑亭。
自身もフランス大好きだったというカイディン帝の趣向を反映してか、フランス風の様式があちこちに見える。
前庭には石像が並んでいる。
兵馬俑のようなものか。
ここにも韓国のアジュンマ方がご機嫌で記念撮影。
にしても韓国とか中国のおばちゃんたちのポーズの決め方って堂に入ってますよね。
記念写真慣れしてるっていうか。
日本人で中々キメキメのポーズ取れる人っていないっすよね。
閑話休題。
石造の建物は全体的に黒ずんでいる。
これはベトナム自体が湿気が多いからで、古い建物だけでなく、10数年前に建てられた建物ですら真っ黒に変色しているのでご安心を。
このように建物全体はフランス様式の建物だが…
細かい装飾のディテールは中華風。
階段の脇には獅子。
棚の上に香炉と鏡が置いてある西洋風の静物画風のレリーフ。
中に入ってみる。
最初は啓成殿という部屋。
黒ずんだ外観とは打って変わって、内部は
絢爛豪華な世界。
壁はぜーんぶタイルモザイクである。
ベトナムのお寺に行くとよくタイルモザイクの祭壇や香炉を見かけるがここまで徹底してタイルモザイクで埋め尽くされた空間は中々ないだろう。
アジア各地の陶器を集めて使用しているとか。
中には日本のビール瓶も使用されている。
天井画はモザイクじゃなくて絵でした。すげー絵。
四季の様子を表現しているという陶器のモザイク。
えも言えぬ圧迫感を感じる。
その奥にある部屋。
天蓋の下には皇帝の像が。
この地下に皇帝が眠っているのだ。
フランスと中華のミックス。
その
どちらでもあり、どちらでもない不思議な空間だった。
安土桃山様式を100倍濃くしたような金箔で覆われた部屋。
コテコテ過ぎてどこから見ていいものやら。
中華とフレンチの融合した料理をヌーベル・シノワーズとか言うけど、その建築版と言ったところだろうか。
特に圧巻だったのがこの柱。
細かい陶器のレリーフで龍があしらわれている。
中華建築もそうだが、ベトナムの寺院建築などでも柱に巻き付いた龍は定番中の定番だ。
柱頭の駒かい装飾までびっしりと陶器で覆われている。
あまりにも建設費がかかって国民に大ヒンシュクだったとか。
この偏執狂的な仕事具合、嫌いじゃありませんよ。
ベトナムの文化、少なくとも近現代建築においての特徴は異なった背景を持つ文化の混成様式であると言えよう。
ローカライズされた中華様式とフランス様式、その両方が混ざって、どこかにありそうでどこにもない不思議な建築様式が現れる。
それが結果としてベトナム建築のオリジナリティになっているのではなかろうか。
香炉の上に乗っている謎の動物が可愛かった。
豪華絢爛な廟に眠るカイディン帝、大好きなフランス様式に囲まれてご満悦のことと思う。
フランスと阮朝という異なる文化の出会いが生み出した
ベトナムバロックの極北といえよう。
次へGOGOGO!