南阿蘇にある白川水源から湧き出した水は白川となって熊本駅前を通り、島原湾に注いでいる。
その白川の中流域を地図で見ると冗談のように川筋が蛇行している。
時には蛇行という表現さえも生ぬるい、心電図かっつーくらいのありえない角度のカーブが連続していたりする。
そんな白川中流域の両岸に二つの神社がある。
弓削神宮と弓削法皇社、川を挟んで建つこの二つの神社はそれぞれ男神女神が祀られており、二社一対で弓削神社をなしているのだとか。
で、まずは女神を祀る弓削神宮から。
こちらは白川がV字型に急カーブしている内側、V字の先端近くにある神社だ。
裏手は川なれど、周囲は住宅に囲まれ隣にはゲートボール場がある、ごくごく普通の神社である。
あくまでも外から見た限りは。
しかし本殿前や手水に早くも「アノ人」が立ってたり寝てたり。
この弓削神宮、および弓削法皇社は弓削道鏡に由来するという。
弓削道鏡といえば奈良時代に天皇の皇位を伺おうとした天下の大悪人、という事になっている人物。
その道鏡が朝廷での失脚後、この熊本の地で藤子姫と夫婦になり幸せに暮らした、というのがこの神社の縁起である。
で、道鏡と懇ろだったとされる孝謙天皇とこの地で夫婦となった藤子姫が祀られているというわけ。
もっとも正史では道鏡は栃木で死んだことになっているのだが…
そして何といっても道鏡といえば巨根の代名詞。巨根といえば道鏡の枕詞ともいえよう。
…というわけでここは道鏡にちなんで性器を奉納する神社なのだ。
しかし木のチンコ奉納などさほど珍しいモノでもない。
ここの神社のキモは何かというと…うおっとぉ〜!
粟嶋神社で見たミニ鳥居じゃないっすか。
見れば平成20年1月建立とある。ここを訪れたのは19年12月。
正式にはまだ出来上がってないが本邦最新のミニ鳥居であろう。
ここ、弓削神宮も淡嶋神社も下半身の神様。従ってミニ鳥居が奉納されたのだろうか?
そんなこんなで本殿脇にある祠がこの神社のキモだ。
巨大な木製のチンコ。またがって願い事を唱えるそうで。
いや、キモはそこじゃないんだ、問題は柵の内側にある。ホラ、大きいチンコの下。
ガラクタみたいなモノが積んであるでしょ。よ〜く見てくださいな。
こんなんです。
ホネホネブラシ?剣山?いえいえ男女の性器なんです。
ここに奉納されているのはぜ〜んぶ浮気封じの祈願のために奉納された男女性器なのである。
奉納者のパートナーが浮気しないように、文字通り釘を刺しておく、ということ。
もう、見ているだけで痛そうで、痛そうで、くううううう〜。
何だかウチマタになってきちゃうぞ…
チンの方は、まあ、お分かりいただけると思うが、マンの方は…わっかりにくいっすねえ〜。
この手の奉納物って大抵男根ばっかりなのだが、ここのはマンが奉納されているのが特徴的だ。
女性の場合、乳型はたまに見かけるがそのものズバリは…見慣れてないのでチョット照れますな。
もっとも九州では婦人病の際、丸めた藁の中を赤く塗ったものを奉納する習俗もあるらしいので、それほど特殊な事例ではないのかもしれないが。
にしてもマンを奉納する、ということは男性が「オイのカミサンが浮気せんように、神さま頼んますバイ」とか何とか言って奉納してる訳でしょ…豪快な肥後もっこすのイメージからは程遠いぞ。
祠の脇には古いチンマン型がうず高く積み上げられている。
廃棄されたパチンコ台の様でもある。
ここのクギチン、クギマン、かつては境内に「処分に困るほど(神社の説明板より)」奉納されていたそうだ。
しかし昭和28年白川が大氾濫し、それらはぜ〜んぶ流失してしまったそうだ。
つまりここに納められているチンマンはそれ以降に奉納されたモノ、ということになろうが、それでもこんなにあるとは、いやはや人の流れは川の流れの如し、いつまでも絶える事がありませんな〜。
しかし奉納されたチンマン、浮気封じを祈願されるだけの元気者だけあって、釘まみれになっても男は女を女は男を求め合っているようです。
釘が打たれてるから余計燃える…じゃなくて余計絡まっちゃってるみたいですな。
石でわざわざ作りましたか…
げに恐ろしきは周りの深刻な願いを全く鑑みない無意識過剰な絵馬。
「かれ」より先に漢字ができますように、と祈願したら如何であろうか…
一方、川向いの弓削法皇社。
こちらは男神を祀る神社である。
周囲には人家も少なく先程より若干寂しげな雰囲気。
しかし、拝殿脇には素敵過ぎるチン石像(タマ込み)がそそり立っている。
この手の奉納物を見るといつも考えるのだが、コレを石屋に発注するときに何と言って頼むんだろう?
やっぱ男らしく仁王立ちして「石でチンコ作ってくれや!」とか言い放つんだろうか。
…男らしい!漢だ!男子たるものかくありたいものである!でも俺には無理だな〜。
で、石屋さんも「んじゃ、先っちょとタマのところは研磨してツヤ出しときましょか」「おう、カリ下筋三本で頼むわ」…くうう〜〜〜何て男前過ぎる会話なんだ!
…スミマセンついつい興奮してしまいました…
拝殿前にもニョキニョキと雨後のタケノコならぬマツタケの如く男根が戦国時代の大名よろしく群雄割拠しているぞ。
↓もう、コレなんかシロナガスクジラみたいだもの。
さて、こちらも昭和28年の白川大氾濫でほとんどが流失してしまい、数は少なくなってしまったがチンマン型が奉納されている。
カリの部分に念入りに、かつ丁寧に打ち込まれた釘。
男根の先から根元までビッチリ縦に打ち込まれた釘。
様相は様々だが、打ち込む人の怨念が込められているのは容易に想像ができる。
…えっ、真珠入り?
こちらは女性器。結構丁寧に編んである。
これが一番訳分からなかったのだがNゲージ車両を2つ針金で縛りつけたモノ。
意味不明だけに何だか不気味だった。「彼がこれ以上”鉄”にのめり込みませんように…」ってか?
また、多少毛色の変わった奉納物も見受けられた。
藁で作ったチン…あ、コレ藁人形か。
釘を打つという行為からどんどんエスカレートしちゃったように思う。
チンコに「死ね!」とか書いたり、藁人形とか打っても、ここの神社はもともと五穀豊穣とか子孫繁栄とかそっち系統ですから。
もうチョット神様の都合も考えてあげましょうよ…
いずれにせよ人間の業の深さを感じずにはいられなかった。
2007.12.
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