金刀比羅宮絵馬殿/香川県琴平町


香川である。金毘羅さんである。

金毘羅さんといえば香川県ナンバーワン観光地。

「え〜っ、金毘羅さん? 超メジャーじゃねえ?

との声も聞こえてきそうなので詳しい事は他のサイトやガイドブックを参考にしていただくとして、ここでは本殿の脇にある絵馬殿のハナシをさせていただく。

 

長い石段を登り詰め、膝がガクガクになった状態で本殿脇の絵馬堂になだれ込む。

ここは金毘羅さんに奉納された数々の絵馬が掲げられている。

でも、よ〜く見ると・・・

 

それはほとんどが船の写真の納まった額だったのだ。

「こんぴらふねふね〜」の歌を持ち出すまでもなく金毘羅さんは古くから船舶業界の信仰を集めている。

まあ、海に近い神社には船絵馬の奉納は珍しくないが、ここまで数が揃うと壮観の一言に尽きる。

・・・とここまで言って気付いたが全体の引きの画像とかがないですねえ。

足がガクガクで余裕がなかったんです。すまぬ。

絵馬には船の航行安全が祈願されている。

まあ、隠しても隠しきれない程のメジャー企業の奉納絵馬が多いのでボカシもぼちぼち適当に。

ヤン○ーディーゼルはさすがにリアルなエンジンの絵が入ってますね。

上2点は絵馬とはいえ少し浮き出た半立体のレリーフ状になった絵馬。このような半立体の絵馬は結構多かった。

勿論船が一点モノだけに絵馬も一点モノだ。

こういった絵馬はやはり実際に船の設計や建設に携わった理工系のエンジニアが作るのだろうか?

普段は神も仏も縁のない船舶工学を極めている研究室で「これはこうだ」「いや、ここはこうだ」などと和気あいあいと絵馬を作ったりするのだろうか。

時には、「この波のカタチは流体力学的に絶対おかしい!」とかで喧嘩になっちゃったりするんだろうか?

そんな事を考えながらずらりと並んだ絵馬を眺めていると結構力作が揃っている事に気付く。

 

下左はトローリング船なのだろうか。模型そのものが奉納されている。

下右は博多釜山を結ぶカメリアライン。何とも絵馬らしからぬフォーマットだ。これはこれで面白い。

絵馬堂の一画には樽が積まれておりそこにも様々な幟が立てられていた。流し樽というらしい。

スクリュー奉納もかっこいいですね。

そういえば絵馬堂ではないが実物大の巨大なスクリューも境内に奉納されていた。

 

 ソーラーパワーで動く船。

 現物を奉納ってゆーのはやっぱり大きすぎますね。

 で、もっと大きい船の航行安全祈願。

 この人、宇宙から帰ってから脱サラして農業やってるんでしたっけ?

 当時、一番好きだった記事「秋山さん宇宙で朝立ち!」

 ・・・東スポ最高。

え〜っと。有名人もそれぞれの世界で安全航海ってことで。浮き沈みの激しい業界ですから。

鉄で出来ててデカいんだから船もプラントも一緒じゃあ〜!

・・・という訳で瀬戸大橋や石油貯蔵庫(かな?)も安全祈願。

 電気バリカンヒット祈願。

 売れろ!売れてくれえ〜!

 これは大阪の裁縫屋さんの奉納額。

 額の中の布がずり落ちてしまって見にくいがお城の刺繍ですね。

 大阪城なんでしょう。

 で、何故に城?

 以上の絵馬は規模の大小の差こそあれ、皆、仕事観系の祈願、つまり安全や商売繁昌といった、比較的ポジティブなお願い事だ。

 

しかし中には個人が奉納した意味不明な額も奉納されていた。

 中には祈願の趣旨も良く判らない絵馬もある。

 まあ、奉納した人が判ればいいんだろうけど。ワニって。

 

 

 馬に乗った男性と赤子を抱いた女性。

 それを囲うように梅の花が咲いている。

 右下には束ねられた髪の毛も奉納されている。

 何の祈願だか判らないけど、チョット恐かったです。

 

そして一番印象的だったのがこちらの絵馬。

 

屋内で皆に看取られながら今まさにあの世に旅立とうとした瞬間を描いたのだろう。

心配そうな人達、ぶ然とした医者、泣き伏せる家族、そして中央には目を瞑った人が横たわっている。

これは亡くなった人の死の瞬間を描写した絵馬ではない。まあ、一般的にそんなモノを奉納する訳がない。

この絵馬にはポイントがある。

それは中央にいる人物が蒲団をかけて横たわっている人に四角い本の様なモノを掲げている。

その本のようなモノには丸に金の字が記されている。これは金毘羅さんのマークなのだ(正確には金と鳥が合体したようなマーク)。

額の左右に書かれている奉納文を読むとこのお方心臓病を煩い四度死亡し、蘇生したという驚愕の経歴。

それもこれも金毘羅さんの神通力のお陰で、どうもありがとう的な内容の絵馬なのだ。

そりゃ4回も生き返ったら絵馬でも何でも奉納するわ。ってゆーか奉納するしかないでしょう。

 昭和5年に奉納された大絵馬である。

 

 

さらに同じようなシチュエーションの絵馬が。

こちらも人数少なめ医者なしバージョンながら、やっぱり今まさに死んでしまう!的な絵柄。

「おおお、お松(仮名)!逝くんじゃねえ!神様仏様金毘羅様!どうかお松(仮名)を助けてやってくだせえ!」

と手を合わせていると、西の空から雲に乗った金毘羅様がっ! ベベン ベン とその時!

「お、お松(仮名)!おめえ、生き返ったのか!金毘羅様ありがたやありがたや〜」

 

・・・といったストーリーなのだろう。

 気になるのは画面左上の雲に乗った金毘羅さんの姿。

まあ、神様だけに姿を表わさず、かわりに御幣が描かれている。

そういえばさっきの絵馬にも医者の真上、鴨居の辺りにモヤモヤっとしたモノがあったが、これもよ〜く見ると御幣だった。

 

見ようによっては「お迎え」の様子を描いた絵馬に見えてしまうが、金毘羅さんの御利益バッチリだという事を示す絵馬だったのだ。

だからこそ目立つところにドーンと掲げてあるのだろう。

構図が三尊来迎図とか拝み絵馬そっくりなのが凄く気になるのだが、まあ、いいです。

 

帰りは登って来た石段を再び降りたのだが、もう思い出したくありません・・・

 


2006.5.

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