お千代保稲荷/岐阜県海津市



お千代保稲荷は岐阜県南部やその周辺では大変有名なお稲荷さんで、いつたくさんの人でにぎわっている。



いずれにせよ地元の人からすれば何でいまさら珍寺とかいわれなきゃならないんだ、との向きもあろうがチョット気になったので。


日本三大稲荷とする説もあるが、例によって日本三大〇〇の一位二位は確定していても三位はそれぞれ微妙。

写真判定でもわからない事が多いのだよ。

まあ、関東だったら笠間稲荷、中国だったら最上稲荷、九州だったら祐徳稲荷など全国にひしめく強豪稲荷との激しい三位争いとなるのだが、残念ながら神社の規模でいうとチト分が悪い。

しかも二位確定の豊川稲荷が隣の愛知県にあるため京都、愛知、岐阜で三大稲荷というのも独占禁止法に抵触する可能性はないまでも、全国の稲荷ファンの皆さんからは納得を得にくい状況であろうことは容易に想像がつくだろう。


まあ、そんなことはどうでもいいか。



ここお千代保稲荷は中京ソウルフードの牙城として知る人ぞ知る裏グルメスポットなのだ。

串カツ、どて、おでんといったいわゆる名古屋系B食がてぐすねひいてお待ちかね。

そして正調名物草もち、さらにナマズの蒲焼までと、何が飛び出すか判らない食い物パラダイスなのである。



そんな参堂を大勢の人が行ったり来たり。



境内にもたくさんの参拝客がひしめいている。

入口で油揚げとロウソクを購入。

油揚げは三角形で藁が通してある。勿論直に手で持つと手がびちゃびちゃになっちゃうから持ち手として藁が付いているのだろうが、何か謂れがあるのかも知れない。




人の波と一緒に歩くとそこにはロウソクを灯す小さな八角堂がある。



ロウソクは六角錘の燭台に挿すのだが、これが満員御礼。



やっと空きを見つけてロウソクを挿すも、溶けた蝋だらけなのでポトンと下に落ちてしまった。

下を見ると同じ運命を辿ったロウソクの死骸がみっしりとマカロニグラタンのように。合掌。



隣にはお狐サマがカラフルなタスキを巻かれて座っている。






で、拝殿。



ここで先程買った油揚げを投入。賽銭箱の前にはたくさんの揚げがてんこ盛り。

木で出来た台は揚げの油を吸ってギトギトに光ってました。

    

真剣に参拝する人達。
何故か「あ〜ありがたいなあ〜、また来年も来れたらいいなあ〜」というフレーズを独りで何度も繰り返している人がいました…



人出の割には狭い境内には本殿以外にもいくつか建物がある。
そんな中のひとつ。



名刺がビッシリと挟み込まれていました。

使用済みの定期券や名刺を壁に貼ってある居酒屋は見たことあるが、神様にまで名刺って…

まあ、ビジネス習慣では自分に利益をもたらすであろう取引先とは名刺を交換するのが慣わしですけど。

「ええと、この度、××商事〇〇支局に配属されました営業の△△です。本日は商売繁盛のお願いに上がりました。どうぞよろしくお願いいたします。」といった礼儀正しすぎる参拝風景なのか。



さらに別の建物にも…



扉に名刺がビッシリと。



一体いつ頃からこのような名刺奉納が起こったのだろう。



不思議な事にこの神社はお札やお守りの類を一切出していないという。

参拝に際して何らかのカタチが欲しい、という人々の単純かつ深刻な欲求からこの習俗は産まれたのだとすると、なまじ笑って見ているだけでは済まない重大な問題をはらんでいるかもしれない。

新しい民間信仰の習俗が成立しているところなのかもしれない。

もしかするとあと5、60年もすれば神社に名刺を刺すのが当たり前になっているかもしれない。んで、口うるさいオババ(今年辺りに産まれてんだよ!)がお嫁さん(推定2040年生まれ)に向かって「最近の若いもんは神社に行くのに名刺も持って行かないんか!」と愚痴っているかもしれないっすね…





あ、でもノボリの奉納はあるわけで…



思えば参堂のお土産や食事処の多さもお守りや護符に代わる信仰的「何か」なのかもしれない。



2008.02.
珍寺大道場 HOME