安養院/東京都目黒区


目黒の不動さまの門前通りに奇妙な看板が立っている。それっぽい写真とともに「北インドチベット仏教美術展」と銘打たれたその看板に引き込まれるように路地を入って行くとそこにはお寺があった。

そのお寺は都内などでよく見かけるコンクリート造りの味気ない寺なのだが、その本堂の回廊の下の隅の方に申し訳なさそうに、しかしインドテイストたっぷりの安養院美術館と書かれたゲートがある。

で、中に入ろうとすると寺の住職なのだろうか40歳前後の男の人が来て、子連れの私を見て「小さいお子さんにはちょっと怖いかもしれませんよ〜」などと嬉しいことを言ってくれたりする。そっか、怖いのか、地獄巡りものなのか。などと勝手に想像を膨らませ、中に入ってみる。

で、十数分後。外に出てきた我々を住職らしき人が待ち受けていて「あれ、早かったですね、おもしろくなかったですか」。うむ〜、面白かったけど、地獄巡りとかそういうんじゃなかったのね。勝手に想像してたこちらが悪いんだけど、倅は怖がるどころかキョトンとしている。

中は本当に仏教美術展だったのだ。ただし所々洞窟をイメージしたハリボテの壁になってたりして窟院風にしてあって、その中にインドの仏像や蔓陀羅などが展示してあるので、子供には怖いと判断したのだろうが、残念ながらウチの倅は私と一緒に数々の珍寺を巡ってきた(というか連れ回された)戦歴を持つ身。この程度のところではビビらないのだ。過去に余程ギャン泣きされたことがあったのだろう。

それにしてもこの寺のインドかぶれ具合は一体何なんだろう。聞けば先代住職からの悲願だとか。本堂の下にこれだけの施設を造るのも大変だったろう。ま、好きなんだからしょうがねえか。

ついでだから、本堂の方も見てみる。内陣には寝釈迦さんに布団が掛けられていた。なんか本当に人が寝てるみたいで、こっちの方がよっぽど不気味だったぞ。

なんだかな〜、などと思いつつ本堂を後にすると、後からまた「お嬢ちゃん達にはちょっと怖いかもよ〜」の声が。怖くないっつーの。

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